今回は、これまでご紹介してきたスポットの中から、ジャンル別におすすめをピックアップしてお届けします。まずは、旅行だけでなく日帰りのお出かけや地元の人からもニーズの高い、ランチのお店をセレクト。誠実な生産者から仕入れる野菜や鮮魚、多様な食文化とともに磨かれてきたその店ならではの味など、覚えておきたい「京都ランチ」リストをお送りします。
■暮らすように、小さな旅にでかけるように、自然体の京都を楽しむ。朝日新聞デジタルマガジン&Travelの連載「京都ゆるり休日さんぽ」はそんな気持ちで、毎週金曜日に京都の素敵なスポットをご案内しています。 (文:大橋知沙/写真:津久井珠美)
※営業状況が変更されている場合があります。ご注意ください。
観光地や市街地から少し離れた立地にもかかわらず、遠方からも予約客が後をたたないのが「ototojet(オトトジェット)」。天然・無添加の魚介を扱う鮮魚店が完全予約制で手がけるランチは、一般的なお造りや海鮮丼のイメージをくつがえす、独創的なビジュアルが魅力です。
店主の辻井智貴さんが自身の感性を大切に作る海鮮料理は、まず魚介の色や質感の美しさを感じてもらうことがモットー。「魚離れと言われる今、見た目から食べる楽しみを感じてもらえたら」と、立体的でみずみずしい盛り付けで、食べる人の心をつかみます。ハーブや花を採り入れたり、食器ではないものをうつわに見立てたりと、自由な発想は食べる人の気分をも明るくするもの。身構えず、楽しんで、魚を食べることの喜びや豊かさに気付かされます。
ototojet
https://www.instagram.com/ototojet/
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https://www.asahi.com/and_travel/20200228/219746/
フランスの国民的なランチメニュー「ステックフリット」を、クラシカルかつお値打ちにいただけるのが「ブション」。日本人好みに多品目の食材をアレンジしたり、季節に合わせて献立を変えたりするのではなく、フランスの街角にあるようなオールドスタイルの食堂であり続けています。
ミディアムレアに焼いた牛ハラミに、パセリとレモンジュースを合わせたメートル・ドテル・バター、たっぷりのフライドポテトを添えた「ハラミのグリエ」(ステックフリット)は、「思い出したら食べたくなる」ような、記憶に残る味わい。心地よい歯ごたえとあふれる肉汁に、自然と胃袋がワインを求める魅惑の一皿です。
ブション
http://www.bellecour.co.jp/bouchon%20file/bouchon.htm
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https://www.asahi.com/and_travel/20190322/64798/
生産者の顔が見える新鮮な野菜がそろう八百屋「ベジサラ舎」。採れたてのみずみずしい葉野菜や泥つきの根菜が並ぶその奥に、老若男女誰もがくつろげる食堂があります。畑の旬を余さず採り入れた定食「すこやかセット」は、野菜不足を一気に解消してくれる一膳。「野菜の食べ方の参考になれば」と、素材を生かしたシンプルな調理で、家庭でもまねしやすいよう工夫しています。
「ご近所さんの待ち合わせ場所になったり、お子様の成長を見られたり、そうした憩いの場になれることがうれしい」と語る、店主の中本千絵さん。生産者から直接仕入れること、無農薬・減農薬に取り組む農家を応援することなどを心がけつつも、「うんちくよりも、まず食べて『おいしい』って感じてもらえたら」と朗らかに笑います。「おいしい」を入り口に、作り手や地域とつながる。そんな食体験に、心まで満たされることでしょう。
ベジサラ舎
https://www.instagram.com/vejisara.sha/
■紹介記事はこちら
https://www.asahi.com/and_travel/20201106/293557/
韓国古美術の静謐(せいひつ)なたたずまいに囲まれて時を過ごせる「寺町李青(りせい)」の名物は、「カルビサンド」。信州「村沢牛」を特製のタレでサッと焼き、サンチュやえごまの葉、自家製のキムチとともに挟んだサンドイッチです。意外な組み合わせながら、和牛のうまみをキムチの酸味がピクルスのように引き立てる味わいは、一度食べたらやみつきに。テイクアウトも行っているので、京都御苑でのピクニックランチもおすすめです。
愛好家の間で「李朝」と愛(め)でられる朝鮮王朝時代の工芸品は、簡素ながら存在感のある造形や質感が魅力。李朝家具のしつらえや「ポジャギ」と呼ばれる韓国の布工芸、オーナーの鄭玲姫(チョン・ヨンヒ)さんのコレクションが飾られた店内は、小さな美術館を訪ねたような気分になれます。
寺町李青
https://www.instagram.com/teramachilisei/
■紹介記事はこちら
https://www.asahi.com/and_travel/20180105/10341/
昼食をどこで食べるかは、京都歩きの楽しみの一つ。お目当てのランチを軸にして、そこから観光やショッピングを組み立てるのもおすすめです。和食でなくとも、湯葉や湯豆腐でなくとも、世界中から食通が集まる古都の食の実力はそこかしこに宿っています。