ここからしか見えない京都
  

格式高い名刹で美しい仏像に出合う

東山三十六峰の一つ、(がち)輪山(りんざん)の麓にたたずむ泉涌(せんにゅう)()は、四条天皇をはじめとする歴代天皇の菩提所となり、「御寺(みてら)」と呼ばれるようになった。格式の高さを物語るように、境内は美術品の宝庫だ。

江戸幕府4代将軍徳川家綱が再建した本堂の仏殿は、大屋根が美しい一重(いちじゅう)入母屋(いりもや)造り。堂内の(しゅ)弥壇(みだん)には、現在、過去、未来を表わす運慶作の阿弥陀・釈迦・弥勒如来の「三世仏」が並ぶ。また天井の「雲龍図」や本尊背後の「飛天図」、裏壁の「白衣観音」は狩野探幽の手によるもの。

現在、過去、未来にわたり、平和と幸福を祈念している泉涌寺の「三世仏」

大門の左手奥にあるのは「楊貴妃観音堂」で、六羅漢像の中央には楊貴妃観音が安置されている。美しい彩色と顔立ちから、良縁や美人祈願の観音様として親しまれる。

さらに泉涌寺の山内には九つの塔頭寺院があり、いずれも重要な寺宝を持つ。総門前北側の(そく)成院(じょういん)内陣には5・5㍍の本尊・阿弥陀如来坐像が鎮座し、両脇には楽器などを持つ二十五菩薩像が並ぶ。妙なる音楽が鳴り響く極楽浄土の世界を立体的に表しているという。

まさにオーケストラのような即成院の阿弥陀如来坐像と二十五菩薩像

後堀河天皇の勅願所だった戒光寺(かいこうじ)の本尊は約5・4㍍の釈迦如来立像。首のあたりに流れたように見えるのは血の跡といわれ、後水尾天皇の即位争いの身代わりになったという逸話から「身代わり丈六さん」とも。運慶、湛慶(たんけい)親子の合作だ。

戒光寺の釈迦如来立像は、台座から光背部を入れると約10㍍の高さに

後花園天皇勅願所の()(でん)院では快慶作と伝えられる宝冠阿弥陀如来坐禅像や逆手の阿弥陀如来立像が。また重要文化財の本堂を持つ雲龍院では、険しい表情の「走る大黒天尊像」をぜひ拝顔してほしい。

旅行読売
(2022年2月号より転載)

【放送時間】
京都浪漫 悠久の物語
「美しい仏像に出逢う~泉涌寺と塔頭寺院~」
2022年1月17日(月) よる8時~8時53分
BS11(イレブン)にて放送

▽その他の仏像の記事を読む

https://www.kyoto-tokutoseki.jp/feature/tabiyomi/2021/06/15/455/

タグ一覧

#人気ワード