ここからしか見えない京都
  
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九回目「十日戎と小さな冒険」

コロナ禍になってから、これまでのように気軽に出かけられなくなりましたが、なるべく気になるところには行って、エッセイに書いていきたい。
そう思った私は、行き先を厳選し、タイミングを見計らって、気をつけつつ外出しています。
連載6回目に紹介した『法観寺』にある八坂の搭もそのひとつです。
これからも十分に気をつけつつ、気になったところに足を運び、その感想をここでお伝えできたらと思っています。

さて、先日私は、祇園の『京都ゑびす神社』のお祭り、『十日戎』へ行っていました。

ちなみに『京都ゑびす神社』は、西宮、大阪今宮神社と並んで日本三大ゑびすと称され、「えべっさん」の名で親しまれている商売の神様です。
京都に住んでから、1月10日前後に『十日戎』という商売繁盛を願うお祭りがあると知り、毎年欠かさず『十日戎』詣りをしています。
『十日戎』では、福笹に縁起物の飾りをつけて受けて、神棚や高い場所に飾ると良いとのこと。なぜ、笹なのかというと、笹は冬でも青々としているため、逆境や困難に強い、商売繁盛の縁起物とされているとか。
最初の内は私も他の参拝者たちと同じように福笹と飾りを受けていました。ですが、義母が言うには笹の飾りを去年より少なくしては、景気が悪くなるとのこと。あくまで義母の話ですが、たしかに去年より飾りを少なくするというのは、良くない気がします。ですが、それではキリがなくなってしまう……。
どうしたものか、と考えた私は福笹をやめて、福籠を授けることにしました。籠も金運を入れるための縁起物だそうてす。
持ち運びもしやすく、飾りやすく、とても気に入っています。

去年の福籠を返納して、参拝をし、新たな福籠を授けて、境内を後にしたところで、これまでは帰宅しているのですが、今年はせっかく祇園まで来たわけです。
これまで気になりつつ、通り過ぎていたお店に入ってみようと決めました。
祇園四条にある町家をリノベ―ションした『祇園ビストロ丸橋』というお店で、『CACAO MARKET』(第5回参照)の近くにあります。

町家にはミスマッチのようで、でも、しっくりきている看板が掲げられていて、前を通るたびに、「素敵だなぁ」と思っていました。
恐る恐る引き戸を開けると、高い天井から和風の照明が下がっていて、和モダンな雰囲気が目にはいました。

京町家らしく入口は小さかったものの、とても奥行きがあります。
素敵な店内に胸を躍らせながら私はカウンター席について、メニューを確認すると、ハンバーグ、ビストロカレー、ステーキと、洋食をメインとしたランチセットが色々ありました。
ランチのお値段は決して安くはないのですが、高いというほどではなく、祇園のど真ん中です。このお店の雰囲気に、前菜、ご飯、サラダにスープまでついたランチは、コスパが高いと感じました。

届いたステーキランチは、牛肉の程よい赤身、その柔らかさ、とても美味しい。
食後のデザートまで大満足でした。
今度、誰かに、「祇園で素敵なお店ないかな?」と聞かれたら、おすすめできるお店のひとつに『祇園ビストロ丸橋』さんを加えたいと思いましたし、また、ぜひ来たいと思いました。
気になるお店に入ってみるというのは、ちょっとした冒険です。
この日の冒険は、大成功。
またひとつ、お気に入りのお店が増えたことを嬉しく思いながら、私は祇園を後にしたのでした。

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この記事を書いた人
望月麻衣
 
京都在住の道産子。もの書き。 『京都寺町三条のホームズ』(双葉社)『わが家は祇園(まち)の拝み屋さん』(KADOKAWA)『京洛の森のアリス』(文藝春秋)『太秦荘ダイアリー』(双葉社)など書籍発売中。  
 

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