3月、新たなはじまりの季節を迎えますね。
私が京都に引っ越してきたのは、2013年の3月末。
まさにはじまりの季節に、新しい生活がスタートしたわけです。
たまたま当時の日記が出てきて、読み返していたのですが、あの頃の私の体験が、誰かの『今、気になること』のお役に立てるかもしれない、と思いまして、今回は日記を基に当時を振り返った記事をお届けしたいと思います。
京都へ来る直前は、北海道ではなく、夫の仕事の関係で茨城に住んでいました。
海を渡る引っ越しではなかったのは多少助かりましたが、楽ということはありません。
茨城から荷物を3/25に出し、翌日に京都の下鴨にある新しく住む家で受け取ったのですが、それからの作業は、もう思い出したくもないくらい。
ダンボールは、約80個。部屋のあちこちに積み上げられたダンボール、ダンボール、ダンボール……一向に片付く気配がなく、もう、夢にも出てきたほどです。
三日も経つと、もう嫌になりまして、家の作業を放り出し、家族で自転車に乗って散策に出かけることにしました。
この時、最初に向かったのは、これから氏神様になる下鴨神社。
世界文化遺産でもある下鴨神社は、とても歴史が深く、また、敷地も広大です。
ご祭神は、賀茂建角身命に、玉依媛命。賀茂建角身命は、導びきの神として方除、厄除け、入学、就職、交通、旅行、家内安全、と多方面に御神徳があり、玉依媛命は、婦道の守護神として縁結び、安産、育児等。また、水を司る神様として御神徳があるとか。
ここだけで、なんでも叶ってしまいそうなご利益。
こんな素晴らしい神社がこれから氏神様になってくれるなんて、心強い限りです。
とりあえずご挨拶をして、せっかくだから桜を観に行こうと、自転車に乗って少し先へ。
蕾が開きはじめの桜が並ぶ鴨川を眺めながら自転車で漕ぎ、京都大学の脇を通って、『哲学の道』へ向かいました。
ここは、何度か来たことがあるのですが、桜の時期はこの時が初めてでした。
哲学の道は入り口付近よりも、奥へ奥へと進んで行った方が、より落ち着いた赴きのある雰囲気になります。
道沿いに素敵なカフェが何軒もあって、「わぁ、今度絶対行ってみよう!」と胸を躍らせながら思ったものです。
そのまま私たちは、哲学の道を進み、『大豊神社』に向かいました。
ここは初めて行く神社です。
ちょうど地元ニュースで、「大豊神社の桜と梅が同時に開花しました。桜と梅が同時に開花したのは30年ぶりのことです」と話していたんです。
それを聞いて、すごい、絶対に行きたい! と意気込み、夫にその気持ちを伝えたのですが、
「はっ? 桜と梅の同時開花なんて、北海道なら毎年のことやろ」
とバッサリ。
言われてみれば、北海道は、梅も桜もライラックも花と言う花が一気に開花していました。いや、でも、京都では、珍しいことなのです。
どうしても行ってみたい! と、強く訴えたことで、大豊神社に向かうことになったのです。
しかし思っていたよりも坂があり、私も子どももヒーヒー言いながら自転車を漕いで、ようやくたどり着きました。
大豊神社は、山にひっそりと佇む古くも素朴な神社で、私としてはとても好きな雰囲気でした。
社殿の脇で門のように咲き誇る枝垂れ桜と枝垂れ梅が幻想的に美しく、しばし目を奪われました。
そんな大豊神社の前に鎮座するのは、狛犬ではなく、狛鼠。
この神社は大国主命を祀っているそうで、古事記によると大国主命が山火事の危機にさらされている時に鼠が現れてその危機を救ったという逸話があるらしく、そこから来ているらしいです。ちょこんと迎えてくれる狛鼠がとても愛らしい。
可愛い狛鼠に見守られながら、本殿にご挨拶をして帰ってきました。
これから良いことが起きる気がして、ワクワクしていたあの日。
私が作家デビューするのは、それから五か月後のこと。
京都が持つエネルギーの恩恵にあずかったのでしょう。
当時を振り返り、これからも初心を忘れずがんばり、下鴨神社、大豊神社にご挨拶に行こうかなと思いました。
ちなみにすべてのダンボールが片付いたのは、デビューからさらに数か月先のことでした。
3月10日に京都ガイドブック&短編集
京都寺町三条のホームズ0巻発売
どうぞよろしくお願いいたします。