ここからしか見えない京都
  

桜色に染まる嵐山の春に憩う

桜の季節が、もう間もなくやってくる。京都の桜の名所の中でも、周辺の山々や桂川のほとりが薄紅色に染まる嵐山の景観は格別に美しい。なかでも嵐山のシンボル・渡月橋と調和した風景は、日本ならではの雅趣豊かな春を堪能することができる。

平安時代に法輪寺参詣のために架けられた渡月橋。亀山上皇が「くまなき月の渡るに似る」と詠んだことから渡月橋と名付けられた 画像素材:PIXTA

渡月橋のほど近くにある法輪寺では、3月13日から5月13日までの間、「春の十三まいり」を行っている。これは幼くして帝位についた清和天皇が、数え年13歳で成人の儀礼として勅願法要したのが始まりなのだとか。法輪寺の本尊・虚空蔵(こくうぞう)菩薩(ぼさつ)が知恵、福徳の仏であることから、現在も13歳になる子供たちが知恵と幸せを授かるため参詣する。また本尊の虚空蔵菩薩が丑年、寅年生まれの守護であることから、今年おすすめのお詣りスポットだ。

約1300年前に創建した法輪寺。本堂前では狛犬ではなく、牛と虎の一対の石像が迎える

嵐山や渡月橋も、かつては境内地だったという世界遺産の天龍寺。春になると後醍醐天皇を祀る多宝殿前や曹源池庭園では、どこか儚げなシダレザクラが風に揺れる。

塔頭寺院である(ほう)厳院(ごんいん)の「獅子吼(ししく)の庭」は、春と秋のみ特別公開される。室町時代の禅僧・策彦(さくぜん)(しゅう)(りょう)が嵐山を借景に作庭した回遊式庭園で、「獅子吼」とは仏が説法するという意味があるそうだ。心を研ぎ澄まし、静かに散策すれば人生の真理が見えてくるかもしれない。

「春の特別拝観」(3月19~6月30日)で獅子吼の庭を公開する宝厳院
「春の特別拝観」では画家・田村能里子氏による本堂襖絵も公開(3月12~18日除く)

ちなみに明治の文豪、夏目漱石が教職から離れ、朝日新聞社に入社する前に新聞小説の取材として嵐山を訪れている。かつて、同窓生であり哲学や文学で意気投合した正岡子規とともに京都を旅したことがあった漱石。ひとり京都を訪ね、「獅子吼の庭」を歩きながら心腹の友を想い、涙したのかもしれない。

さらに渡月橋近くには2019年に開館した福田美術館がある。寅年にちなみ、有名画家の虎の絵を展示した企画展「トラ時々ネコ 干支セトラ」(4月10日まで)を開催している。渡月橋を一望にするカフェを併設し、ゆったりと春景色を堪能できる。

【放送時間】
京都浪漫 悠久の物語
「渡月橋で春を想う~法輪寺から宝厳院、世界遺産・天龍寺へ~」
2022年3月21日(月) よる8時~8時53分
BS11(イレブン)にて放送

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