2025年1月13日
京都・右京区にある仁和寺は、宇多天皇が888年(仁和4年)に先帝光孝天皇の遺志を継いで建立した寺院。寺名は元号に由来する。宇多天皇は後に仁和寺の第1世法皇になり、以降、皇室出身者が住職を務める門跡寺院として格式を誇った。
室町時代の応仁の乱でほとんどを焼失したものの、本尊や什物などはかろうじて戦火を免れた。後に徳川三代将軍家光により再興され、御所から数多くの建造物が下賜された。金堂は御所の正殿「紫宸殿」を移築したもので国宝に、また五重塔、御影堂、観音堂は重要文化財に指定されている。建造物自体が貴重な宝物だ。
そんな由緒ある仁和寺だが、昔から庶民に親しまれてきたのが遅咲きの「御室桜」だ。
川端康成の小説『古都』に「御室の桜も、一目見たら、春の義理がすんだようなもんや」という一節があるように、京都の桜の季節が終わる風物詩ともなっている。
ちなみに「御室桜」は桜の種類ではなく、観音堂の南側一帯に広がる遅咲きの桜の総称で、正しい品種は「有明」。樹高が低く、花(鼻)が低いくことに掛けて「お多福桜」とも呼ばれる。また「御室桜」を有名にしたのは江戸時代の儒学者・貝原益軒だ。自著の『京城勝覧』では「春はこの境内の奥に八重桜多し、洛中洛外にて第一とす、吉野の山桜に対すべし」と記している。『京城勝覧』は現代のガイドブックのような存在だ。これほど絶賛された桜なら全国からも花見客が集って、さぞかし賑わったに違いない。
今年も「御室桜」が新しい季節を伝えている。
【放送時間】
京都浪漫 悠久の物語
「御室桜が彩る世界遺産・仁和寺の春~門跡寺院筆頭の風格~」
2022年4月18日(月) よる8時~8時53分
BS11(イレブン)にて放送