2024年10月30日
先月に引き続き、三月も京都御苑の花便りをお届けします。
春を告げる梅の花も盛りを過ぎると、桃の花の盛りへと主役が交代。いよいよお花見シーズンも目前となるころ、梅林に隣接して桃林がある京都御苑には、さらに桜の木もあり、タイミングによっては桜と桃の花が同じ空間に咲く夢のような風景を見ることができます。
京都に越してきた友人から、子供が安心して自然と遊べる場所はどこかと質問されたときに、私が一番に思いついたのが京都御苑でした。
京都御苑は、江戸時代には140以上の宮家や公家の邸宅が立ち並ぶ場所でしたが、明治時代に東京へ都が移り、邸宅が取り除かれ、御所と一体となった景観を維持する公園として整備され、市民へ開放されました。
苑内には樹齢100年を越える木々が育ち、四季折々の花が咲いて、季節の移ろいの中で多様な自然観察を楽しむことができます。
長い冬の終わりから春のはじまりまで、絶え間なく続く花の良い香りと、木々に見守られて安心して遊ぶ子供たちの、優しい景色がある場所。
駆けまわる子、虫が好きな子、花が好きな子。
私は花の写生中、おひさまの暖かさについうとうとしながら、遠くに子供たちの元気な声を聞いていると、まさにここが桃源郷かしらと錯覚しそうになります。
こんなに美しい風景を繋いでくれた先人、そして今、目の前に広がる風景の中で子供たちを見守る若いお父さんお母さん方に感謝の気持ちでいっぱいになりながら、こんなに穏やかで平和な景色がこの場所の片隅にあるだけではなく、どこまでも広がり、いつまでも続きますようにと祈らずにはいられません。