京都には明治から昭和初期に建てられた「モダン建築」が現存するだけでも500以上あり、街は建築博物館さながら。筆頭は2025年に創立150年を迎える同志社大学。上京区の今出川キャンパスには明治期に建てられた学舎など5棟が、国の重要文化財に指定されている。烏丸通に面した西門をくぐると、1884年(明治17年)に竣工した京都市内に現存するで最古級のレンガ建築の彰栄館、その2年後に建てられた同志社礼拝堂(チャペル)が並び、近くには尖塔の美しいクラーク記念館もそびえる。今も実際に使われており、学生ガイドが案内する見学ツアーを定期的に実施。事前に予約をすれば誰でも参加することができる。
明治時代、別荘や住宅が次々と建てられた左京区の南禅寺界隈。その先駆けとなったのが、第3代・第9代内閣総理大臣・山縣有朋(やまがたありとも)の別荘「無鄰菴(むりんあん)」だ。東山を借景にした庭園は近代日本庭園の傑作といわれ、有朋が自ら指示し、7代目小川治兵衛(おがわじへい)が作庭した。母屋の横に建てられた洋館には、1階は土蔵の扉の奥に展示スペース、2階には和洋折衷の豪華な応接室が設けられている。この応接室では、日露戦争開戦前の外交方針を決める重要な会議が行われたという。
2016年4月に開館した「京都鉄道博物館」は、鉄道の歴史を通して日本の近代化の歩みが体感できる施設。こちらのモダン建築は、1914年(大正3年)に建てられ、現存する国内最大級で最古の鉄筋コンクリート造の扇型車庫(国指定重要文化財)だ。現在は明治から昭和に活躍した蒸気機関車およそ20両を展示している。目の前には機関車の向きを変える転車台があり、鉄道ファンの聖地となっている。
上京区北白川は、明治時代に創立された京都帝国大学に近いことから、大学教員が住居を構えるようになった。京都帝国大学理学部教授で、“日本のダーウィン”と称された駒井卓博士夫妻が、1973年(昭和48年)まで暮らしたのが「駒井家住宅」だ。設計・建築を請け負ったのは明治末期から昭和にかけて、数多くの名建築を遺したウィリアム・メレル・ヴォーリズ。3連のアーチ窓などアメリカンスパニッシュ様式がベースだが、赤い和瓦を使用するなど周囲の自然と調和した造りが特徴的だ。室内には腰掛付きの出窓や収納スペースがふんだんに取り入れられ、建物の随所に機能的な工夫が施されている。2階の客室は現在、展示ルームになっており、駒井博士が研究に用いた道具や、旅先でのコレクションが展示されている。
制作著作:KBS京都 / BS11
【放送時間】
京都浪漫 悠久の物語
「もっと気軽に!京都モダン建築の旅〜名建築の知られざる物語〜」
2024年3月18日(月) よる8時~8時53分
BS11(イレブン)にて放送