天の川を隔てた彦星と織姫が年に一度だけ、七夕の日の夕べに出会うことができる。
私たちにとっては、年に一度、笹に五色の短冊を飾って願いを込めることができる日。
笹の枝が、船のように、波のように、人々の願いをのせて夏の青空に揺れています。金銀の折り紙をお星さまへと変身させたり、紫の折り紙を茄子のかたちに、赤と緑はスイカのかたち、白は提灯や投網に模した飾りへと変化させたりするのが楽しくて。短冊に書くお願い事を考えることもわくわくして、子供の頃、私はこの行事が大好きでした。
今年の旧暦の七夕さまは、8月10日。
この日、北野天満宮へ七夕のお詣りへ行ってきました。
北野天満宮が星の信仰とも関わりが深いことは、以前こちらにも書かせていただきました。
織物に秀でた織姫星にあやかって裁縫などの技能上達を星に願う信仰と、機を織り祖先の霊に捧げるお盆の御神事「棚機(たなばた)」が合体したものが、日本における七夕のルーツなのだそうです。機織りの祖神は、親しみを込めて「たなばたさま」とも称される「天棚機姫神(あめのたなばたひめのかみ)」さま。御神事はやがて、庶民にもひろがり、当初は、五色の糸や裂と共に、願い事を書いた梶の葉を飾るかたちだったそうです。
北野天満宮の周辺は機織りが盛んな西陣の街。七夕信仰はあつく、「天神様の七夕」として地域の方々からも大切にされてきました。
この日、境内では、御手洗川が開放されていて、足付けのご神事「御手洗祭」も行われていました。川に足をつけて身を清め祓い、五色の蝋燭からお願い事を選んで火を灯し、祈りと共に捧げます。
北野天満宮での足付け神事は、御手洗川の整備に伴い、近年再興された行事ですが、御手洗祭の前日、祓い清められた御神具、梶の葉をご神前に献上する「北野御手水神事」は、平安時代より続くとされる歴史ある御神事。角盥(つのだらい)の上で梶の葉に水差しの清水をかけて、「禊」の姿を現す、北野天満宮で最も重要な祭典・北野祭に先立つ「禊祓の御祭」としてご斎行をされてきたそうです。
御手洗川の終点には、この盥のような氷の台座に梶の葉の短冊が置かれて美しい景色を作っていました。川の水は冷たく心地よく、涼やかな風が吹き、笹や梶の葉がそよぐように、五色の蝋燭の火もゆらゆらと揺れています。
五色の色には、陰陽五行に基づくそれぞれの願いの種類があるようです。
私が選んだのは、芸道上達の意味があると教えていただいた青(緑)色の蝋燭。
日本画が少しでも上達して、日本画や日本文化の分野でほんの少しでも神様や祖先のお慶びとなる日本画家になれますようにと、願いを込めて火を灯しました。
夜空の星や、お盆の迎え火や送り火の焔(ほのお)。ご先祖さまに感謝して、未来への願いと共に過ぎ去った年月にも思いをはせる夏です。