ここからしか見えない京都
  

奥京都の霊場で貴重な仏さまに出合う

2024年5月、福知山市の觀音寺・小籔実英住職が、京都府北部にある9カ寺と宗派を超えて結成したのが「奥京都・国宝十箇寺巡り霊場会」だ。国宝、重文を所蔵する寺院を巡り、奥京都の文化財や歴史を知ってもらうのが狙い。觀音寺を一番霊場とし、順に二番霊場・天寧寺(福知山市)、三番霊場・安国寺(綾部市)、四番霊場・光明寺(綾部市)、五番霊場・正暦(しょうれき)寺(綾部市)、六番霊場・松尾寺(まつのおでら)(舞鶴市)、七番霊場・金剛院(舞鶴市)、八番霊場・多禰(たね)寺(舞鶴市)、九番霊場・智恩寺(宮津市)、十番霊場・縁城(えんじょう)寺(京丹後市)となる。今回は一番から五番までの寺院を紹介しよう。

「丹州・華觀音寺」の別名を持つ觀音寺は、関西で最も古い「あじさい寺」として知られ、例年6月から7月におよそ100種類1万本のアジサイが咲き誇る。また、秋の紅葉も見事で例年11月初旬から12月初旬にかけて、樹齢200年以上の古木が赤や黄色に染まり、境内を彩る。本堂前の高さ2.1メートルの「石造炎髪(えんぱつ)不動明王立像」は、国の重要文化財に指定された45.5センチの「木造炎髪不動明王立像」をモデルに建立したもの。いつでも本堂で拝顔できるのがありがたい。境内には病気平癒や縁結びなどを願う七観音や、木陰にたたずむわらべ仏など見どころも多彩だ。なかでも参拝客に人気なのが「にぎり花仏さま」。箱の中から取り出した木製の仏さまの裏面には、おみくじのようにその人に当てたメッセージが。また、小さなダルマにおみくじが入った「だるまみくじ」は持ち帰りもできるが、最近ではダルマの背中に願い事を書いて、本堂の格子戸に供えていく人が多いという。

觀音寺の本堂前には「炎髪不動明王立像」の石像が参拝客を見守るように立つ

天寧寺は1365年に臨済宗の僧、愚中周及(ぐちゅうしゅうきゅう)を開山として創建。静かな山間にたたずむ伽藍は、江戸時代中頃に再建されたとされる(本堂は昭和中期に再再建)。中央に建つ薬師堂は、「方三間(ほうさんげん)裳階(もこし)付」という正式な禅宗仏殿で、天井には江戸後期の絵師、原在中(はらざいちゅう)による雲龍図が描かれている。土蔵造りで六角円堂の開山堂とともに通常非公開だが、10名以上であれば、事前の連絡で拝観可能だ。

禅宗仏殿の正規の形式を持つ天寧寺の薬師堂。見事な天井画「雲龍図」も見もの

安国寺は、室町幕府初代将軍、足利尊氏生誕の地と伝わる古刹。参道の途中には「足利尊氏公産湯の井」が残る。境内は100本のもみじが色づく紅葉の名所で、「もみじ寺」とも呼ばれる。山門の正面にある茅葺き屋根の伽藍は、本堂となる仏殿。本堂内には本尊・釈迦三尊坐像が鎮座する。室町時代の仏師、豪円が1341年に制作、2000年に国の重要文化財に指定された。通常非公開だが、事前に申し込めば拝観可能。

紅葉の時期は茅葺きの本堂と相まって、美しい風景を織りなす安国寺

周囲の豊かな自然の中に、朱塗りが鮮やかな国宝の二王門が浮かび上がる光明寺。門の左右には重要文化財の金剛力士像が安置され、国宝の門の中に国宝または重要文化財の像が安置されているのは法隆寺、東大寺、金峯山寺、光明寺のみだという。現在の本堂は江戸時代後期に再建されたもので丹波・丹後の真言宗本堂の中では屈指の規模。本尊の十一面千手観音菩薩立像は33年に一度ご開帳する秘仏で、本堂は通常非公開となっている。

「平成の大修復」で創建当時のたたずまいとなった光明寺の二王門

雨乞祈願を成功させた功績によって、一条天皇から年号を寺名に授かった正暦寺は、歴代綾部藩主の祈願寺でもあった。そのため本尊の観音像ほか、綾部藩主・九鬼家ゆかりの不動明王像や駕籠など、貴重な文化財が残されている。なかでも鎌倉時代作と伝わる「涅槃図」(国の重要文化財)は、現在奈良国立博物館が管理しているが、その代わり精巧なレプリカを製作し、公開している。また正暦寺では2016年から「寺泊」として客殿の1棟貸しを行っている。精進料理のコースと軍鶏を一羽丸ごと使った懐石料理のコースを提供、住職自ら腕を振るう。また住職が専属コンシェルジュとなり、寺ならではのさまざまな体験プログラムを用意して、宿泊客の目的や心の状態に合わせて体験プログラムを提案している。

正暦寺の懐石・精進料理は、住職が丹精込めた手作り

制作著作:KBS京都 / BS11

【放送時間】
京都浪漫 悠久の物語
「奥京都の古寺を巡る~花の寺・反骨の禅寺・3つの森の寺~」
2024年10月21日(月・祝) よる8時~8時53分
BS11(イレブン)にて放送

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