京都に息づく日本画の世界。今回は常盤貴子さんが京都市立芸術大学教授で日本画家の川嶋渉さんとともに、日本画の魅力に迫ります。
最初に訪れた京都市京セラ美術館では、2024年12月22日まで「巨匠たちの学び舎 日本画の名作はこうして生まれた」を開催中。京都市立芸術大学が、2023年に京都駅東部へキャンパス移転したことを記念した特別展です。同大学は1880年に京都府画学校として開校、以来数多くの有名画家を輩出しています。なかでも竹内栖鳳(たけうち せいほう)は、日本画の近代化を大きく前進させた先駆者。西洋画の「光の描き方」に感銘を受けた竹内は、影を意識した緻密な描写で奥行きや立体感を生み出し、従来の日本画にはない新しい表現方法を示したといいます。
四条通から少し離れた鴨川のほとりに、1718年創業の「京料理ちもと」があります。先々代の時代、画家や歌舞伎役者など著名な文化人が足繁く通い、なかでも日本画家の堂本印象は、さまざまな作品をこの店に残しました。そんな京都画壇ゆかりの場所で、常盤さんは名店の料理を堪能。季節感あふれる八寸やグジ(アマダイ)の椀物、その昔、画家らが節分に集まり食したというイセエビの焼き物など、当時の様子を想像しながら味わう料理は格別のようです。
続いて訪れたのは、川嶋さんが教鞭を執り、次世代の芸術家たちに伝統と革新の技を伝える京都市立芸術大学。学校設立に携わった日本画家の幸野楳嶺(こうの ばいれい)の「模写から学ぶ」という姿勢は、今もなお引き継がれています。常盤さんが訪ねた古い日本画を模写するクラスでは、先人の残した作品から技術を読み取るため、学生たちが緻密な描画に取り掛かっています。京都府画学校の設立は、閉鎖的であった京都画壇の様々な流派の技術を統合し、新たな日本画の研究を進めることも目的の一つでした。そのため、日本画コースにはさまざまな様式を学びながら、新たな表現を模索するカリキュラムが設けられています。学生たちの一心な思いが日本画の世界をどう変えていくのか、期待に胸が膨らみます。
京都に息づく日本画の世界は、伝統工芸にも大きな影響を与えています。北区原谷地区で「染工房 正茂」を営む上仲正茂さんは、手描き友禅作家で京都府の「京もの認定工芸士」でもあります。京友禅は着物に絵柄を描く文様染めの技術で、その工程は分業制で行われますが、上仲さんはすべての工程を一人で手掛け、細部にまでこだわった美しい作品を創り出しています。かつて下絵は日本画家たちが手掛け、手描き友禅の世界に新風を吹き込みました。上仲さんも学生時代に日本画を学んだ経験を活かし、先人の技術を踏襲した作品を手掛けています。こちらでは「手描友禅体験キット」の販売、また「手描友禅職人体験」などを実施しています。今回、常盤さんは「色挿し」の工程に挑戦、伝統工芸の繊細な技術を体感しました。
【次回放送情報】
■京都画報 第38回「京都に息づく日本画の世界」
BS11にて11月13日(水)よる8時00分~8時53分放送
出演:常盤貴子
※ 放送後、BS11+にて11月13日(水)よる9時~ 2週間限定で見逃し配信いたします。