幕末まで都が置かれた京都では、多くの芸能が生まれました。今回は常盤貴子さんが京都で根付き、愛されている劇場をめぐりながら、京都の演劇の世界を体験します。
京都市街を南北に流れる鴨川に架かる四条大橋は、出雲阿国(いずものおくに)が創始したと伝わる歌舞伎ゆかりの地。その四条大橋の東詰に建つ南座は、日本で最も歴史の古い劇場です。南座が誕生したのは江戸時代初期、およそ400年前のこと。現在の建物は1929年に建てられたもので、幾度かの改修を経ながら伝統の櫓(やぐら)と、大屋根の桃山風破風造りの外観は竣工当時の姿を守り、国の登録有形文化財と京都市の歴史的意匠建造物に指定されています。
四層の吹き抜けの空間になった場内は客席数1082席、その内60席が桟敷(さじき)席です。折り上げ格天井や、朱塗りの欄干、各階を彩る提灯、桟敷席の擬宝珠(ぎぼし)と、豪華な内装です。2階西ロビーの「京都南座 なだ万茶屋」は、日本料理の老舗「なだ万」が運営するレストランで、「稲庭うどん」が看板メニュー。1階東ロビーで販売される「なだ万厨房」の観劇弁当も人気です。歌舞伎のイメージが強い南座ですが、歌舞伎公演は1年のうち3ヵ月ほど。それ以外の期間は現代劇やコンサートなども上演しています。
日本を代表する古典芸能・能楽は室町時代、観阿弥(かんあみ)、世阿弥(ぜあみ)親子によって大成しました。能は京都の町衆にも広く親しまれ、能楽の師匠から謡(うたい)を習い披露する「謡講」を盛んに行っていたほど、身近なものだったそう。
京都御苑から歩いて5分ほどにある「冬青庵(とうせいあん)能舞台」は、能楽師の青木道喜(みちよし)さんの自宅の一角に設けられています。全85席ほどの小規模な空間で、鏡板(かがみいた)に描かれた満開の白梅は、冬青庵能舞台の特徴のひとつ。加えて、客が座る畳の間から高さが数十センチほどしかなく、まさに演者の息遣いが感じられる近さです。常盤さんは長男・真由人(まゆと)さんの迫力あふれる演技を観賞し、能の魅力を間近で体感。冬青庵能舞台では伝統的な演目から新作まで、多彩な能公演を開催するほか、能舞台の敷居の高さを払拭するため、ダンスや音楽コンサートなども上演されています。
京都大学や京都芸術大学があり、閑静でアカデミックな雰囲気が漂う北白川には、劇団「地点」のアトリエである「アンダースロー」があります。「地点」は、現代演劇で注目を集め続け、京都を拠点に海外にも活動を広げている劇団。アトリエは空き家になっていたライブハウスを、床の材質から壁の色まで劇団のメンバーで話し合い、約1年半かけて完成させました。客席にはメンバーが京都の古家具屋を回って1脚1脚買い集め、専門の職人に張替えを依頼した赤いアンティーク調の椅子が並びます。代表で演出家の三浦基(もとい)さんは、すぐ近くに「タッパウェイ」という食堂をオープン。観劇前後の時間も含めて、トータルでの観劇体験をプロデュースしています。看板料理は具だくさんのスープとシベリアの水餃子の「ペリメニ」。カフェメニューのほか、ウォッカなどアルコール類も充実しています。
お気に入りの劇場を探して、いつもと違う京都旅を楽しんでみてはいかがでしょう。
【次回放送情報】
■京都画報 第39回「京都で劇場へ行こう!」
BS11にて12月11日(水)よる8時00分~8時53分放送
出演:常盤貴子
※ 放送後、BS11+にて12月11日(水)よる9時~ 2週間限定で見逃し配信いたします。