京都には明治以降に建てられた名建築が数多く残っています。近年、そうした建築物が、旅人を迎え入れる宿泊施設として再び脚光を浴びています。今回は常盤貴子さんが、そんな宿の魅力に触れ、京都の新たな一面を紹介します。
有名寺院や観光名所が集まる東山に、2019年オープンしたのが「パークハイアット京都」。実はこのホテル、創業140有余年の歴史を持つ老舗料亭「山荘 京大和」の敷地内に建っています。「山荘 京大和」は1877年に創業、1949年に東山で料亭を開業しました。幕末、尊王の志士たちが会合を開いた場所と伝えられています。歴史ある建築物と土地を次の世代に引き継ぐために、竹中工務店が持続可能な事業として成立する仕組みを作り、およそ2700坪ある敷地内にホテルを誘致しました。ホテルは地上2階、地下4階建て。京都の街並みを遠くから眺められるように、高低差のある敷地に複数の棟を分けて配置しています。また周辺の景観と「山荘 京大和」の静謐(せいひつ)な雰囲気を壊さないよう、外観のデザインにも和を意識。客室は全70室、そのうち9室がスイート。食事は、八坂の塔や市街を一望にするレストランで。エンターテイメント性豊かな鉄板焼きと繊細なフレンチがコースで提供されるディナーや、「山荘 京大和」での京懐石を楽しむことができます。
京都市内を南北に流れる鴨川、その正面橋の西側に建つのが「丸福樓(まるふくろう)」です。
世界的なゲームメーカー「任天堂」の旧本社社屋に、建築家・安藤忠雄氏設計の新築棟を加え、2022年にブティックホテルとして開業しました。館内に足を踏み入れると、タイルと大理石で装飾された空間がゲストを迎えます。当時の受付カウンターをそのまま利用したレセプションは、レトロかつモダンな雰囲気です。ゲストラウンジは、かつて商談が行われていた応接室。そのほかにもタイムカードの打刻機付きの時計や、荷物運搬用のエレベーターなど、あちらこちらに当時の面影が残されています。創業家・山内家が暮らした部屋を使用した「ジャパニーズスイート」は館内で唯一、和室と露天風呂を備えています。暖炉が残るクラシックな雰囲気の「スーペリアキング」は、かつて客間として使用されていました。また山内家がプロデュースしたライブラリー「dNa(ディーエヌエー)」は宿泊者のみ入室可能で、壁一面に設けられた棚には初代「ファミリーコンピューター」をはじめとする任天堂の歴代ゲーム機や、デジタルアートで表現された花札、関連書籍などが展示されています。
飲食店が立ち並ぶ木屋町通の一本裏の路地に、2020年にオープンしたのが「UNKNOWN KYOTO(アンノウン キョウト)」。かつて遊郭だった築100年以上の建物を活用した、“泊まって、食べて、働ける”宿泊複合施設です。建物は北棟と南棟の2棟で、全10室。客室のほかコワーキングスペースやランドリー、レストランを併設し、同じ場所で仕事も食事もでき、暮らしているかのように過ごせるホステルです。2階には遊郭建築特有の細長い廊下が延び、天井や梁、窓、洗面台のモザイクタイルも当時のまま。客室も当時の雰囲気を残しつつ、使いやすい快適空間に改装しています。コワーキングスペースは24時間利用可能、観光客と地元の人との交流の場になるようにと、暖炉のあるリビングも設けられています。
清水寺から山裾に下りた場所にある「ザ・ホテル青龍 京都清水」は、昭和初期に建てられた旧清水小学校の校舎を活用しています。建物は傾斜地を活かした設計で、外観や内装デザインはモダンかつ個性的。改修にあたっては、現代に相応しい快適性を追求しながら、特徴的な意匠が最大限に継承されています。教室を活用した客室は、広さが平均50平方㍍とゆったりとした開放感が魅力。宿泊客の朝食のレストラン「restaurant library the hotel seiryu」は元講堂で、天井が高く、まるで図書館のように1000冊以上の書籍が並ぶ落ち着いた空間です。常盤さんが訪れたのはルーフトップバー。ホテル4階屋上テラスにあり、360度のパノラマビューで八坂の塔、東山三十六峰、京都市街を一望できます。
歴史を尊び、継承しながらリノベーションされた名建築の宿。新たな京都旅の楽しみになりそうです。
【次回放送情報】
■京都画報 第41回「京都の名建築に泊まる」
BS11にて2月12日(水)よる8時00分~8時53分放送
出演:常盤貴子
※ 放送後、BS11+にて2月12日(水)よる9時~ 2週間限定で見逃し配信いたします。