ここからしか見えない京都
  

英国人が愛した多彩な京都の表情

京都は世界的にも憧れの旅先だ。昨年、米国の有名旅行雑誌の世界人気都市ランキングで1位にも選ばれた。京都を愛する外国人は枚挙にいとまはないが、なかでも歴史上で多くのエピソードを残すのは英国人だろう。

明治時代、日本に立ち寄り独自の視点で旅行記を書いたのが、当時新聞記者だったラドヤード・キップリング。『ジャングル・ブック』の著者で、英国初のノーベル文学賞の受賞者だ。ちょうど京都を訪れたとき、東本願寺の再建中だった。親鸞聖人の真影を祀る御影堂(ごえいどう)は、間口76㍍、奥行き58㍍、高さ38㍍の壮大な造り。すぐれた匠の技を目の当たりにしたキップリングもさぞかし驚いたに違いない。

木造建築で国内屈指の規模を誇る東本願寺の御影堂

そして世界の喜劇王、チャップリンが最初に京都を訪れたのは1936年のこと。当時の新聞では芸舞妓の「鴨川をどり」を観賞し、金閣寺や清水寺を見てまわったことが報じられている。その際に宿泊したのが老舗旅館「柊家」だ。チャップリンは日本旅館らしいきめ細やかなもてなしをたいそう気に入り、晩年にも息子たちと訪れている。宿から見える濡れそぼつ東山の風景を「浮世絵のようだ」と感嘆したそうだ。

きめ細やかなもてなしの精神が息づく柊家

さらにエリザベス女王も京都の美に魅せられたひとり。夫のエジンバラ公と訪れたのは美しい石庭で知られる龍安(りょうあん)寺だ。女王が絶賛したことで世界的に注目された方丈前の庭園は、白砂の上に大小15個の石が配置され、抽象的な構成のため作者の意図がわからず謎の作庭といわれている。

15個の石が禅の世界を織りなす龍安寺の石庭

英国のロックスター、デビッド・ボウイがこよなく愛したのは北区の正伝寺。比叡山を借景にした白砂にサツキの刈込が並ぶ枯山水の庭園を眺め、ときに涙を浮かべたという。世界を席巻したロックスターは、この寺でどのような境地に至ったのだろうか。京都の懐の深さには、しみじみ恐れ入るばかりだ。

小堀遠州作庭と伝わる正伝寺の枯山水の庭園

【放送時間】
京都浪漫 悠久の物語
「英国人を魅了した京都の美~東本願寺・龍安寺・正伝寺~」
2021年7月26日(月) よる8時~8時53分
BS11(イレブン)にて放送

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