ここからしか見えない京都
  

読んで楽しむ空想京都さんぽ。センスの良い個人店が集まる「御所南」エリアへ

旅行やお出かけが難しい今、これまで連載でご紹介してきたスポットをエリア別にピックアップし、空想の京都さんぽにお連れします。心おきなく京都に出かけられるようになったら、気になるエリアをどんなコースで巡ろうか、考えるのにぜひ参考にしてみてください。第1回は「御所南」。緑豊かな京都御苑の南かいわいに、センスの良いカフェやレストラン、手仕事や骨董(こっとう)の店が並ぶエリアです。

■暮らすように、小さな旅にでかけるように、自然体の京都を楽しむ。朝日新聞デジタルマガジン&Travelの連載「京都ゆるり休日さんぽ」はそんな気持ちで、毎週金曜日に京都の素敵なスポットをご案内しています。 (文:大橋知沙/写真:津久井珠美)

※営業状況が変更されている場合があります。ご注意ください。

旅するように味わう。フランスとタイが隣り合うレストラン

こちらはタイ料理店「トルビアック」。極彩色とミリタリーのインテリアがアジアの熱気を思い起こさせる

食事の時間も旅するように。そんな気分をかなえてくれるのが、一つの空間に二つのレストランが同居する「ビストロ ベルヴィル/トルビアック」。気取らないフランスの郷土料理を味わうなら「ビストロベルヴィル」へ。タイの家庭や屋台で食べられているような味を堪能するなら「トルビアック」へ。完全予約制なので、気のおけない仲間と旅行に行くような気分で、異国の料理とムードに浸ることができます。

フランス料理店「ビストロ ベルヴィル」のコースより。朝3,800円〜、昼夜4,800円〜(いずれも税込み)で、 自分で組み合わせを選ぶプリフィクススタイル

朝昼夜とすべての時間帯でコース料理のみなので、旅の朝ごはんをゆったり味わったり、ランチやディナーでお酒とともに楽しんだりと、食事そのものがメインイベントになるはず。旅好きの店主が作る料理は、日本でポピュラーなフランス料理・タイ料理とは一味違う、現地の暮らしや風土が匂い立つような一皿ばかり。食事を終えて店を出るころ、まるで小さな旅を終えたような充実感が残ります。

ビストロ ベルヴィル/トルビアック ※営業状況はお店のフェイスブックなどでご確認ください。
http://jajouka-kyoto.jp
ビストロ ベルヴィルのフェイスブック https://www.facebook.com/bellevillekyoto/
トルビアックのフェイスブック https://www.facebook.com/tolbiackyoto/
■紹介記事はこちら
一つの空間に二つのレストラン いくつもの国を旅するように

作家が手縫いで仕上げる、色とりどりの革小物

小物のほか、スエードのポシェットやレザーをあしらったかごバッグも人気

「ビストロ ベルヴィル/トルビアック」から西へてくてく。「革工房Rim」は、京都の若手クリエーターが集う職住一体の町家「あじき路地」で経験を積み、独立した、革小物作家・押野敬子さんのアトリエ兼ショップ。発色の良い植物タンニンなめしのレザーをひと針ひと針手作業で縫い、財布やバッグ、スリッパなど、使い込むほどに味わいを増す革小物に仕立ててゆきます。

奥にはアトリエがあり、道具や材料などを見られるのも楽しい

実物の色や風合い、作業の様子などを見ながら、革と糸、刻印を自分らしくオーダーできるのはショップならでは。旅のポシェットをここで調達して出かけるお客さんもいるそうです。

革工房Rim
https://www.rim-works.com
■紹介記事はこちら
仕事や暮らしのパートナーに 京都「革工房Rim」で新生活の品々を

職人の道具で、おうち時間を楽しく

昔ながらの金網製品のほか、かごやコーヒードリッパーなど、現代のライフスタイルに合うアイテムも並ぶ

若き作り手が活躍する一方で、古きよき職人のものづくりが息づくのもまた、京都です。老舗の手仕事の店もぜひ訪ねてみてください。「辻和金網」は、創業80年を超える、職人による京金網の店。茶こし、焼き網、コーヒードリッパーや水切りかごなど、家で過ごす時間を豊かにしてくれそうな暮らしの道具がそろいます。丈夫で使い勝手がよく、見た目にも美しいと料理家や編集者からも人気を集めます。

トーストやお餅がパリッと焼ける焼き網は不動の人気。左:「手付焼網(受け付)」(大・正方形税込み4400円)など

新しいアイテムや既存の品のブラッシュアップは「お客様の声から生まれることが多いです。より丈夫にするために工夫することも」と3代目の辻泰宏さんは話します。使う人の声に耳を傾け、実直にものづくりを続けてきたからこそ、プロの愛用者やリピーターが多いんですね。

辻和金網
http://www.tujiwa-kanaami.com
■紹介記事はこちら
お餅もトーストもパリッと香ばしく。京金網「辻和金網」の暮らしの道具たち

京都御苑内の憩いのスポット。緑に開けた休憩所

緑に囲まれた「中立売休憩所」。休憩所内部、テラス席は飲食物の持ち込み可で、お弁当などをいただくこともできる

さて、街歩きの後は、緑豊かな京都人の憩いの場「京都御苑」へ。広々として風通しがよく、新緑、ツツジ、ショウブやアジサイなど季節の草花が次々と見頃を迎えます。散策の合間には、西側の中立売通御門にある「中立売休憩所」で一服を。御苑の木立を眺めながら、大きな窓やオープンテラスが心地よい空間で一息つくことができます。

カフェのテーブルと椅子は、御苑で伐採されたケヤキを活用したもの

京都の食文化を採り入れたお弁当や食事、甘味やドリンクも充実しています。2016年より通年無料公開となっている「京都御所」と合わせて、京都の“セントラルパーク”を満喫してみてください。

京都御苑 中立売休憩所
https://nakadachiuri.jp
■紹介記事はこちら
新緑の京都御苑散策に 緑に開かれた「中立売休憩所」

京都御苑は、観光客はもちろん、散歩やピクニックを楽しむ地元の人々も一緒になって、のびのびと過ごすことができる場所。だからこそ御所南には、良質でセンスの良い個人店が点在し、骨董店や茶舗が並ぶ寺町通、家具や建具の専門店の多い夷川通など、散歩する人を楽しませる魅力が尽きません。徒歩でめぐれる範囲ですので、京都に暮らすような気分で街歩きが楽しめます。また、テイクアウトの食事やオンラインショップも併せてチェックしてみてください。

この記事を書いた人
大橋知沙 編集者・ライター
 
東京でインテリア・ライフスタイル系の編集者を経て、2010年京都に移住。 京都のガイドブックやWEB、ライフスタイル誌などを中心に取材・執筆を手がける。 本WEBの連載「京都ゆるり休日さんぽ」をまとめた著書に『京都のいいとこ。』(朝日新聞出版)。編集・執筆に参加した本に『京都手みやげと贈り物カタログ』(朝日新聞出版)、『活版印刷の本』(グラフィック社)、『LETTERS』(手紙社)など。自身も築約80年の古い家で、職人や作家のつくるモノとの暮らしを実践中。  
この記事の写真を撮影した人
津久井珠美 写真家
 
大学卒業後、1年間映写技師として働き、写真を本格的に始める。 2000~2002年、写真家・平間至氏に師事。京都に戻り、雑誌、書籍、広告など、多岐にわたり撮影に携わる。  

朝日新聞デジタルマガジン&Travelより転載
(掲載日:2020年4月24日)

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