ここからしか見えない京都
  

三十二回目「紫式部を訪ねて・番外編」

今年の大河ドラマ『光る君へ』の主役である紫式部ゆかりの地を案内させていただく連載もラストの三回目……なのですが。
今回は、ラストの前の番外編として、清少納言と『枕草子』について語らせてください。
5/26に放送された第二十一回では、清少納言が枕草子をしたため始めるというシーンで、胸が熱くなりました。
ドラマの中では、紫式部と清少納言は交流があり、友人同士という設定です。ちなみに友人同士だったという史実はないという話ですが、残されていないだけで、こうやって交流していた可能性もあるわけです。『光る君へ』は、そんなたくさんの『もしかしたら』をするりと拾い上げて、視聴者を惹きつける物語へと落とし込んでおりまして、私は毎回、脚本家さんの手腕に唸らされております。

『枕草子』は、中学生の時、授業で習いました。その頃は、テストのために暗記をしただけで、特に思うことはなく、男子が「春はかまぼこー」と声を張り上げていたことだけが、鮮明に覚えています。(忘れてもいい思い出)
大人になって読み返すと『四季折々のこういうところが素敵ですよね。こういうことがあると、もうガッカリしちゃいますよね。こういうのに私は心がときめくんです』といったことが書かれているのが分かって、「清少納言って、キラキラしてるなぁ。今で言うところのブロガーかな」等と思っていました。
が、今回の放送を観て、衝撃を受けました。
まさかたった一人の敬愛する姫君の心を慰めるために書かれた随筆だったなんて。
もちろん、ドラマとしての脚色も大いにあるのは分かっていますが、涙が止まりませんでした。
思えば、『枕草子』は、誰かを元気づけよう、楽しんでもらいたい、という想いに溢れており、だからあんなにキラキラしていたのだと。
そして、文章で誰かを元気にしたい、楽しんでもらいたいと思う気持ちは、自分にも通じるところがありました。
読んでくれる人、楽しみにしてくれている人がいるから、自分は書く気力をいただいているのだと、初心に返ることもできました。
ありがとうございます。

そんな清少納言の『枕草子』にちなんで、私も四季折々の好きな京都について、書かせていただきたいと思います。

春は、高瀬川。
木屋町通に流れる小川・高瀬川は、春になると桜の花が満開になります。
高瀬川沿いはどこも情緒があるのですが、二条、三条、四条、五条と北から南へ下っていくにつれ、少しずつディープに。妖艶な雰囲気になっていく様子もお気に入りです。

画像素材:PIXTA

夏は、鞍馬山。
真夏は地獄のような暑さの京都ですが、京都市内に涼しいところもあります。
それが、鞍馬山。出町柳駅から30分で行ける避暑地です。
町の気温が30度を超えていても、貴船の川床は25度くらいでひやりと心地いい。
鞍馬山の涼しく清廉な空気は、夏の暑さや喧騒をひと時忘れられます。

画像素材:PIXTA

秋は、岡崎。
平安神宮、動物園、美術館、そして少し歩いたところに南禅寺や永観堂、インクライン。
ピクニック、芸術鑑賞、神社仏閣詣り、紅葉を楽しみながらの散歩など、全部できてしまうのが岡崎エリア。過ごしやすく、歩きやすい秋におすすめです。

画像素材:PIXTA

冬は、祇園。
八坂神社、高台寺、花見小路。
京都に来るまでは街に流れるクリスマスソングで冬を感じていた私ですが、思えば京都に来てからあまり耳にしなくなりました。(流れていないわけではないと思うのですが)
その代わり南座にまねき(招き看板)が並ぶ様子に、年の瀬を感じるようになりました。
冬の祇園はいつもより華やかで、どこかせわしくなく、そしてわくわくさせてくれる雰囲気があって大好きです。

画像素材:PIXTA

そんなわけで、今回は『紫式部を訪ねて・番外編』でした。

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父・イーフェイからある”宿題”を出されていいたイーリンだが、『蔵』での日々を通して、自らの秘密にたどり着くことになる――シリーズ、第21弾!

この記事を書いた人
望月麻衣
 
京都在住の道産子。もの書き。 『京都寺町三条のホームズ』(双葉社)『わが家は祇園(まち)の拝み屋さん』(KADOKAWA)『京洛の森のアリス』(文藝春秋)『太秦荘ダイアリー』(双葉社)など書籍発売中。  
 

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