ここからしか見えない京都
  

三十四回目「望月ツアー再び」

お久しぶりです、望月麻衣です。
原稿に追われた作家はよく「修羅場」という言葉を口にします。この修羅場、私もそれなりに経験をしてきたつもりでしたが、今までのは、まだまだ甘かったと思わせるくらい、夏から秋のはじまりにかけて近年稀に見る修羅場におりました。
そんなわけで、エッセイを書く余裕がまったくなくなってしまい、2か月間、お休みをいただいてしまっておりました。申し訳ございません。
修羅場を抜けた望月麻衣、復活です。

さてさて、今回のエッセイは『望月ツアー』再びです。
この『再び』というのは、以前、茨城県に住む友達姉妹が京都に遊びに来て、その模様をこちらのエッセイでご紹介させていただきました。
ちょうど一年前のことです。

二十六回目「望月麻衣が案内する王道京都観光」
二十七回目「望月麻衣が案内する王道京都観光 後編」

別れ際に、「必ず来年もまた来るからね!」と、宣言して関東へ帰っていった彼女たち。
私ももちろん、「待ってるね」と返しました。
しかし、私はこういう別れを何度も経験しているから、分かるのです。
『必ず、来年もまた来る』と口で言い、その時は本気で思っていたとしても、実際に来る人は、ほぼいないものだと。

ですので、私自身、また来てほしいけど、本当に来てくれるかなぁ、などと半信半疑でいました。

しかし、友人は本当に今年もやってきたのです。
今回も姉妹で来る予定だったのですが、お姉さんの方が急遽ご家庭の都合で来られなくなり、妹・Aちゃんは、急遽私と共通の友達のYちゃんに声をかけて、AちゃんとYちゃんの二人で来たのです。

「去年の麻衣ちゃんツアーが忘れられなくて。『ひろうす』もう一度食べたいわ」
と、Aちゃん。
Yちゃんの方は、京都には時々来ているけれど、金閣寺・八坂神社・清水寺と超有名どころしか行っていないそう。
これは、Yちゃんも望月ツアーに参加していただくほかない、と今年も私たち夫婦が友人を案内することにしました。

またひろうすが食べたいと言ったAちゃんの他のリクエストは、「南禅寺と銀閣寺に行きたくて、他はお任せ」とのこと。
京都駅で待ち合わせ、友人たちを車に乗せたあと、まずは、『ひろうす』をもう一度食べたいというAちゃんのリクエストに応えるため、嵯峨野(嵐山方面)の豆腐店『森嘉』さんに行きました。

ちなみに、『ひろうす』とは『がんも』のこと。揚げたてでホクホクの『ひろうす』に塩をつけて食べるのですが、これが本当にたまりません!

※前回は写真を撮り忘れましたが、今回は忘れずに撮っておきました。

二回目のAちゃんは、「やっぱり美味しい。食べたかったぁ」と嬉しそうに頬張り、今回初のYちゃんはというと、「がんもの揚げたてなんて食べの初めてだし、めちゃくちゃ、美味しいね」と感激を通り越して、感心していました。

小腹が膨れたあとは、ここからほど近い『車折(くるまざき)神社』へ。

画像素材:PIXTA

『車折神社』は、清原頼業を祭神とする神社。学識の高さと実務の手腕で知られており、学業成就、試験合格のほか、金運・恋愛・技芸上達・芸能のご利益で知られています。
そのため、境内には、著名人の玉垣がたくさん。
そういうこともあってか、近年は『チケット当選祈願』のご利益も囁かれているとか。
ちなみにですが、恥ずかしながら私も文芸上達を祈願して、奉納させていただいております。

(見付けられましたか?)

きぬかけの路を北へ走り抜けて、次は去年、連れていきたいと思いつつ時間がなくて行けなかった『今宮神社』へ。

画像素材:PIXTA

『今宮神社』は、平安時代に蔓延した疫病を鎮めるために創建された神社。そのため、健康長寿などのご利益がある一方で、玉の輿の語源としても知られています。

元々、『お玉』という西陣の八百屋の娘さんが、大奥に入り、徳川家光に見初められ、生まれた息子はやがて将軍・綱吉へ。
庶民から将軍の生母となったことで、『玉の輿』という言葉が生まれました。
そんなお玉さんの氏神様が、『今宮神社』であるということで、ここでは『玉の輿御守り』なんてものもあります。
この『玉の輿御守』独身ならば目の色変えて買っていたかもしれませんが、私たちは3人とも結婚し、子どもも成人している身。
ここまできてしまえば、玉の輿を夢見るよりも、いつまでも元気にいられることを祈願。
その後、参道にある『今宮神社』名物の『あぶり餅』を食べることにしました。
(実はこれが目当てだったり)

白味噌をつけて香ばしく焼き上げた一口サイズの餅がたまらなく美味しいです。
また、店内の雰囲気も情緒があり、AちゃんもYちゃんも大満足してくれました。

『あぶり餅』を食べた後は、『源光庵』へ。

JR東海のCMで知られており、拙著では『京都寺町三条のホームズ』に登場している禅寺です。
源光庵本堂には『悟りの窓』と名付けられた丸い窓と、『迷いの窓』という名の四角い窓があります。
悟りの窓の円型は『禅と円通』の心を表し、円は大宇宙を表現し、迷いの窓の四角は『人間の生涯』を象徴し、生老病死の四苦八苦を表しているとのこと。
広告などでは窓から望む紅葉が使われていますが、青々した木々の様子も美しく、心を打たれます。

源光庵を出た後は、東へ下ってリクエストの『南禅寺』へ。

高さ22メートルあると言われている巨大な三門は、相変わらず圧巻です。
初めて訪れたふたりは、立ち止まって、
「なんて言っていいか分からないけど、すごいね」
と静かに洩らしていました。

これはぜひ、三門に登ってもらいたい、と私たちは受付へ。
友人たちは三門に登れると思っていなかったようで、驚いていました。
三門から見渡す景色が本当に素晴らしいのです。

三門をおりたあとは、本殿をお詣りして、水路閣へ。

「サスペンスドラマで観たことある!」

なんて話をしながら、散策をしました。

南禅寺の後は、『銀閣寺』へ。
今回どうしても銀閣寺に行きたかった、とAちゃん。
というのも、前回、『金閣寺』に行って感動したからだそう。
Aちゃんは修学旅行で金閣寺に行った時は、特に何も思わず、去年大人になってから初めて行って、こんなに綺麗なお寺だったんだと感動したそうで、これはぜひ、『銀閣寺』にも行ってみたいと思ったとか。

その言葉を聞いて、少し焦り、
「いやいや、Aちゃん。金閣寺のイメージで銀閣寺を見たらダメだよ。銀色じゃなくて、どちらかという渋い『いぶし銀』のイメージだからね」
などと言ってしまった私です。

「……ほんとだ、ぜんぜん違うね」

などと、Aちゃんはややガッカリしたように洩らしていましたが、銀閣寺は魅力的です。境内は広く、高台から京の町を見下ろせるのも見どころのひとつです。

銀閣寺を出た頃には、ちょうど陽が暮れまして、一度ホテルにチェックインし、その後居酒屋で乾杯しました。
そんなこんなで終えた今年の望月ツアー。

① 嵐山までドライブ、『ひろうす』を食べる。
② きぬかけの路をドライブして『今宮神社』へ。あぶり餅を食べる。
③ 源光庵で美しい窓を見て心の選択。
④ 南禅寺へ行き、三門を登り、水路閣を堪能。
⑤ 銀閣寺へ行き、東山から京都の景色を堪能。

という行程でした。

ちなみにAちゃんとYちゃんは、今回二泊三日の京都旅。
二日目は、鈴虫寺へ御礼詣り(去年の願いが叶ったそうです)に行き、トロッコ列車に乗って保津川下りを楽しみ、
三日目は、二条城や御金神社を詣ったそうです。

「来年もまた来るね!」
という約束をして、今年も別れた私たち。
果たして来年も会えるのか!?
次回を楽しみにしている私でした。

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よろしくお願いいたします。

この記事を書いた人
望月麻衣
 
京都在住の道産子。もの書き。 『京都寺町三条のホームズ』(双葉社)『わが家は祇園(まち)の拝み屋さん』(KADOKAWA)『京洛の森のアリス』(文藝春秋)『太秦荘ダイアリー』(双葉社)など書籍発売中。  
 

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