迎春 今年最初のお花だよりです。
新春のころに思い浮かべる花といえば、やはり梅の花でしょうか。梅が春告草とも呼ばれるとおり、春が恋しくまだ冬の寒さが残る景色の中で開花する梅の花の美しさは、多くの人の琴線に触れるものです。
その梅の名勝と言えば、京都ではやはり北野天満宮の梅苑が有名です。 訪ねてみると、50種約1500本の梅の木が植えられているそうで、梅にもこんなに品種があったのかと驚かされます。
あの色が好き、このかたちもきれい、と話しながらの散策も楽しく、苑内に立ち込める梅の香りにうっとりします。
北野天満宮で私が大好きな場所が、本殿の前にある三光門です。
荘厳で力強い佇まい。彫刻と鮮やかな彩色が施されているのは、波と跳ねるウサギを見守る三日月、赤い太陽など。
ちなみに、三光とは日・月・星のこと。
いつであったか宮司さんに、三光門が位置する真上が北極星の瞬く地点であり、この三光門を中心に梅の木々の花もまた無数の星に見立てられているのだと教えていただきました。
また、北野天満宮には個人的にも特別な思い出がいくつもあり、そのひとつが、2020年に公式参拝と和歌奉納をさせていただいたことです。
毎年3月と11月、北野天満宮では神職の方々はもちろん、たくさんの方々のご尽力の上に、禊祓のご神事「曲水の宴」が再興されています。
曲水の宴とは、曲がりくねる水の流れのある庭園にてその流れの淵に出席者が座り、流れてくる盃が自分の前を通り過ぎるまでに詩歌を詠み、盃の酒を飲んで次の歌人に盃を流すという、それはそれは雅な宴です。私も色鮮やかな装束を着せていただき、まるで平安絵巻の中にいるような気持ちになりました。
私がいただいたお題は「賀」。
「絵に千年の いのちたのみて 美しき 花を描きて 世々を寿ぐ」
ひとのいのちは限りあるけれど、花が生きている永遠のいのちと千年受け継がれてきた日本画のバトン、その美しいいのちを花の絵に託して、これからも千年続きますようにと、日本画家としての決意と感謝、花と世々への寿ぎの気持ちをこの和歌に込めました。
本年も皆様に喜びの花が咲き、満天の星が煌めくような素晴らしい年となりますようお祈り申し上げます。