今年の桜の満開は本当に早く、あっという間に桜吹雪となりました。
日本では「花」と詠めば、古くは梅のことを表しましたが、平安時代の頃からは桜を表すようになります。日本語には桜にまつわる美しい言葉がたくさんありますね。
お天気などの身近な表現には「花冷え」「花曇り」など、日本画でもモチーフとなり描かれ続けている風景の表現では、「花明かり」や、夜桜のために焚く火の「花篝(はなかがり)」など。
また、私は「花筏(いかだ)」という表現とその景色もとても好きです。
花筏とは、満開の時を過ぎて散った花びらが、水面に浮かび、連なって流れていく景色を筏に見立てた言葉です。
花筏といえば、母と京都の宇治川派流で見た桜吹雪と花筏の美しさが忘れられません。
魚三楼という古くからの料亭にて、花籠に入ったとてもおいしいお食事を頂いたあと、酒蔵の街並みを歩いてたどり着いた宇治川。そこには満開の桜並木と、空中には本当に吹雪のように花びらが舞い、次々に水面に落ちては、ゆったりと合流して花筏となり、天にも川にもやわらかなピンク色の世界が一面に広がっていました。
上の写真を撮影した場所が弁天橋と呼ばれる橋で、このあたりからは十石舟も運行しています。
かつて宇治川派流から淀川を航行した十石舟。今は人気の観光舟となっていますが、江戸時代から明治までは、伏見のお酒やお米などを大阪に運び、天下の台所と呼ばれるほど発展していた大阪からも伏見に魚や様々な荷物を届けていて、かつて京都の食文化や生活を支える重要な水路でもありました。
舟の乗り場のあたりから遊歩道に降りて、足もとでは雪柳がゆれる道を母と歩きながら、頭に乗った桜の花びらに笑ったり、蝶のようにひらひら舞う花びらをどちらが先につかめるか競争したり、子供の頃のように遊びました。桜はまるで大人を童心に帰す力まであるようです。