ここからしか見えない京都
  

第21回「日本画家 竹内栖鳳と出会う / 京都市京セラ美術館」

竹内栖鳳(たけうちせいほう)という日本画家がいる。

写生をとても大切にし、重要文化財の『絵になる最初』でも知られる栖鳳。湿度を帯びて匂いをも感じる草木や動物たち、風景画の中に溶け込む人々の生活、自然や生活の中でとらえたいのちへのまなざしは、鋭くも優しく、筆の力は申し上げるまでもなく凄まじいのです。
本人にも絵にも求心力があり、京都画壇が誇るスターである栖鳳は、私ももちろん、尊敬する画家のひとりです。
近代日本美術史の中ではカリスマ的な存在で、日本画が好きな方であれば、おそらく知らない方はいないでしょう。

画像提供:京都市京セラ美術館
竹内栖鳳(1864-1942)
京都生まれ。本名恒吉。幸野楳嶺(こうのばいれい)門下。1900年パリ万博視察のため渡欧。京都日本画の近代化を牽引。京都市立絵画専門学校、画塾竹杖会にて多数の俊英を育てる。

ただ、日本画というものが、多様な文化やエンターテインメントの中で少し影の薄い分野になってしまった現在、彼の名前を知らない方も当然いらっしゃると思いますし、本来は「日本画とは何か」からお話しするべきかもしれません。

例えば、Do you have a favorite painter? あなたの好きな画家は?
と聞かれてすぐに思いつかずに、何となく、モネやミレー、ピカソと答えるのだとしたら、ぜひ、日本画家の名前を挙げてみてほしいと思います。
さらには、「竹内栖鳳」と答えてみるのはいかがだろうか?と提案してみたい。
この際、生起の順番など関係ない。今、この瞬間、栖鳳の名前を知り、近い未来に、所縁深い京都の地で、彼の日本画に出会うことができたなら、
もう堂々と、本当に、
I do ! Seiho Takeuchi. と答えられると思うのです。

その理由を語り尽くそうと思うと、この1回のエッセイではとても足りないので、次回以降、ほんの少し踏み込んでご紹介できたらいいなと思います。

1901年《虎・獅子図》三重県立美術館蔵 屏風部分
栖鳳がヨーロッパ渡航後に発表したライオンの絵が、個展のポスターに。それまで、日本で獅子といえば、唐獅子であり、アントワープやロンドンの動物園で取材した成果を金屏風に描いた栖鳳のリアリティのある獅子は多くの人々を驚かせた。

では、どこで栖鳳に出会えるかといいますと、たくさんの素晴らしいコレクションをもつ京都市京セラ美術館 (京都市美術館)です。その記念すべき開館90周年記念の大規模個展として、この度、数多の画家の中から選ばれたのが栖鳳。会期は12月3日(日)までとなっているので、ぜひ多くの方にご覧いただきたいと思います。

創建1933年。現存する日本の公立美術館の中では最古で、モダンな外装に日本趣味の屋根を載せた帝冠様式の建築。近年、建築家・青木淳と西澤徹夫の設計でリノベーションされ話題となっている。

栖鳳の誕生日を4日後に控える11月18日(土)には、「わたしたちの好きな栖鳳」というタイトルでトークイベントにも出演させていただきます。会場でお声がけいただけましたら嬉しいです。
https://kyotocity-kyocera.museum/event/20231118

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京都市美術館開館90周年記念展 竹内栖鳳 破壊と創生のエネルギー
2023年10月7日(土)〜12月3日(日)
*月曜休館(祝日の場合は開館)
京都市京セラ美術館 本館 南回廊1階
https://kyotocity-kyocera.museum/exhibition/20231007-20231203
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今回は宣伝のようになってしまいましたが、私にとってこのエッセイは、いつも、純粋に愛を伝えたいだけの“花便り”です。花とは私にとっての本質、美のこと。愛のこと。
正真正銘のラブレターなのです。

これからも京都の花や美しいものを通して、“花の絵描き”よりお手紙を綴ります。
今後ともお付き合いのほどよろしくお願いいたします。

この記事を書いた人
定家亜由子
 
京都在住の日本画家。伝統画材にて花を描く。
高野山大本山寶壽院 襖絵奉納
白沙村荘 橋本関雪記念館 定家亜由子展等、個展多数。
画文集『美しいものを、美しく 定家亜由子の日本画の世界』(淡交社) 刊行。  
 

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