ここからしか見えない京都
  

第27回「生活の中の風景画 / 高島屋美術画廊」

ゴールデンウィークはどこかにお出かけされましたでしょうか?
現在高島屋の美術画廊を巡回する「花と夢 定家亜由子展―艶やかな光につつまれて―」が開催中で、私は京都の画室を離れ、作品と一緒にあちこち飛び回っています。

百貨店の美術や工芸、展覧会のフロアに足を運ぶ人が増えてほしいという願いと共に、このお便りを書かせてください。
1世紀以上も前に高島屋が企画し、大変な人気を集めた展覧会をご存知でしょうか。1909年の冬、高島屋は京都・大阪・東京の各店舗において「現代名家百幅画会」を開催。これは、当時の著名画家100人に新作を依頼し、同じ表装で100幅の掛軸に仕立て一堂に展示した、高島屋初の展覧会でした。
この百幅画会は大成功を収め、1911年の高島屋美術部(美術品の展示・販売部門)の創設に結びついたとされます。以前、こちらの回(第22回「日本画家 竹内栖鳳と出会うⅡ / くろ谷 金戒光明寺」)でご紹介しました、竹内栖鳳(たけうちせいほう)が若き日に、高島屋にある小さな画室で画工として勤務していたことを知る人はあまり多くないかもしれません。「現代名家百幅画会」では、栖鳳の代表作「アレ夕立に」が特別展示され、当時大きな話題を呼んだそうです。

「アレ夕立に」 竹内栖鳳 1909年 高島屋史料館蔵
高島屋史料館で開催中の『企画展「人間 栖鳳」生誕160年 知られざる竹内栖鳳』にて2024年7月1日(月)まで展示

そして、1世紀以上の時を経た今回の私の個展も、当時からのバトンを受け継いでおられる現代の高島屋美術部の皆さんのお力添えで実現しているものです。

百貨店の展覧会は、美術館での展示と異なります。社会と日常、生活が行き交う現在進行形のかたち。絵が単体で輝くのでなく、生活の風景の一部として存在する感じが、私はとても好きなのです。人が集っているところも含めて、ひとつの素敵な絵であり、風景画のようになったら嬉しい!絵があることで、その景色がもっと輝きますように。豊かになりますように。美しくなりますように。笑顔溢れますように。私の心からの祈りです。

皆さまにもご覧いただけましたら幸いです。

花と夢 定家亜由子展―艶やかな光につつまれて―
[東京展] 2024年5月1日(水)– 5月6日(月) 日本橋高島屋  S.C.
[京都展] 2024年5月15日(水)– 5月20日(月) 京都高島屋
[大阪展] 2024年5月29日(水)– 6月3日(月) 大阪高島屋
[横浜展] 2024年6月12日(水)– 6月17日(月)  横浜高島屋

この記事を書いた人
定家亜由子
 
京都在住の日本画家。伝統画材にて花を描く。
高野山大本山寶壽院 襖絵奉納
白沙村荘 橋本関雪記念館 定家亜由子展等、個展多数。
画文集『美しいものを、美しく 定家亜由子の日本画の世界』(淡交社) 刊行。  
 

タグ一覧

#人気ワード