京都にお住まいで日本画家として活躍される定家亜由子さん。定家さんから見た京都の魅力や、秋冬に楽しみにしていることについて伺いました。
インタビュー前編では、創作活動についてお話いただきました。
Q.インタビュー前編で、ほとんど毎日創作活動に励んでいると回答していただきましたが、息抜きの方法について教えてください。
最近は、お気に入りの八百屋さんでお野菜を眺めることが大好きです。
さらに気分転換が必要な時は、京都では大原など自然豊かなところへ行き、道の駅などで花やお野菜を買って帰ります。
その際に、田畑が広がっている風景であったり、蝶がゆらゆらと飛ぶ様子であったり、アマガエルがいたり、稲穂がゆれていたり…それらを見ていると心が安らぎリフレッシュします。自然観察をしながら緩やかな山道を歩くことも大好きです。
Q.日々の中で「やっぱり、京都っていいな」と思った瞬間があれば教えてください。
大正から昭和初期あたりの京都画壇の日本画家が特に好きなんです。
変化が目まぐるしい現代においても、当時と変わらない風景や昔ながらの風習に触れるとき、古の絵描きや人々の息遣いを土地の中、生活の中で感じるふとしたときに、「やっぱり、京都っていいな」と思います。
生活の中で、当時の絵描きさんも同じものを見たり、食べたり、感じたりしながらこの地を基盤に生きて描いていたのかと思うと、同じ土地で生活をして絵を描けることに大きな喜びを感じます。
Q.「京都の特等席」読者におすすめしたいスポットを教えてください。
これまでにおすすめしている神社仏閣や美術館はもちろんですが、何気ない八百屋さんや雑貨屋さん、小さなお店でのお買い物や、小さなギャラリー巡りも楽しいかなと思います。
つい先日、アルバイトをしていたことがある表具屋(ひょうぐや)さんの近くの新大宮商店街を、懐かしく歩く機会がありました。当時から知っているごはん屋さんがお休みだったので、オープンしたばかりのお店に初めて入りました。職人のようなシェフが一人で接客も何もかもされているお店だったのですが、パンもデザートも手作りで、京都のお野菜を使ったとてもおいしいお料理もいただいて、嬉しくなりました。
京都にはたくさんの名店がありますが、路地裏を探検しながら、ガイドブックには載っていないようなところへふらりと行ってみて、自分だけの宝物となるお気に入りの場所や物を見つける、宝探しのような旅も楽しいかなと思います。本当に魅力的で個性的な人が集う土地です。
Q.これからの季節、秋から冬にかけて、京都で楽しみにされていることがあれば教えてください。
紅葉が楽しみです。
また、これからイベントも多くなり、着物を着る機会が増えます。私は着物初心者で勉強中なのですが、京都のご婦人の皆さまの麗しいお着物姿に出会うのが、いつもとても楽しみです。
今日はこんなお祝いのイベントだから、この帯と帯留めの組み合わせにされたんだろうな、というファッションとしての着物ももちろん素敵ですが、秋風が冷たくなり始め、だんだん年末も近づいて気忙しくなるころ、京都の何でもない路地をご婦人たちが道行コートで連れ立って、やや足早に歩いて行かれるという風景がまるごと好きで、出会うとついつい目で追ってうっとり見てしまいます。
Q. 京都の魅力を漢字一文字で表すと何でしょうか。
光
特別に用意された時間や空間ではなくても、心を研ぎ澄ませて見つめていると、自然や花、伝統・文化・芸術、そういった魅力的なものに日常的に生活の中で出会えることが、私にとっての大きな喜び、希望のようなもので、光そのものです。
~定家亜由子さんプロフィール~
京都在住の日本画家。伝統画材にて花を描く。
高野山大本山寶壽院 襖絵奉納。
白沙村荘 橋本関雪記念館 定家亜由子展等、個展多数。
画文集『美しいものを、美しく 定家亜由子の日本画の世界』(淡交社) 刊行。
https://www.sadaieayuko.com/
「京都の特等席」では、エッセイ「花をえがく 日本画家 定家亜由子の京の花便り」を連載中。