ここからしか見えない京都
  

第32回「12月の銀杏さんぽ / 上御霊神社・京都御苑」

今年の秋は、どこへいってしまったんや。
この調子やと、染まらへんまま、落葉してしまうんとちがいますか?
11月になっても暑い日が続いていた2024年の京都で、皆が口を揃えて仰っていたことは、今年の紅葉は、期待ができないのではないかということ。その心配に反して、12月に入ってから一斉に彩られた木々の錦の美しさは、想像を超えるものでした。

連載・第19回「1億5千万年のイチョウ / 京都の古木たち」
https://www.kyoto-tokutoseki.jp/feature/hanadayori/2023/09/14/3611/

では、夏の銀杏の魅力について綴りましたが、今回は、私の好きな上御霊神社の銀杏の黄葉と、そこから遠くないところにある京都御苑の銀杏の黄葉をめぐり、カメラを片手にお散歩をしましたので、いつもより少し多めのお写真にてお便りをさせてください。

お散歩のスタートは、もちろん、上御霊神社から。京都駅から地下鉄烏丸線に乗り換えて約10分。駅からは、徒歩すぐの場所にあります。本殿裏、神明神社のすぐ目の前にある銀杏です。同じ銀杏も、夏と冬とではこんなにも姿が違って、鮮やかな風景として写真に収めることができました。銀杏の黄金色と織りなすようにして見える赤やオレンジ、モミジの美しいグラデーションとの競演が絶妙で、美しさに思わず息をのみます。他にもシダレザクラ、ソメイヨシノの葉の朱色、私のお気に入り・ホソバイヌビワの黄色など、夏には気に留めていなかった、さまざまな落葉樹の葉の色を見つけながらの散策が上御霊神社のお詣りの楽しみのひとつです。

見上げる銀杏の枝も美しいのですが、この写真のように、黄金色の銀杏の絨毯も大変魅力的です。
風が運ぶのでしょうか。銀杏の幹からは離れているように思える境内奥の福寿稲荷神社の辺りまで、黄金色のふかふかの絨毯が続きます。お稲荷さんの鳥居の朱色に黄金色の銀杏の葉っぱがよく似合います。

そして、光栄なことに上御霊神社の御朱印は、数年前に私がご奉納させていただいた「神楽鈴」という題の銀杏の絵がもとになっています。

さて、銀杏の絨毯といえば、上御霊神社からは徒歩で20分ほどの京都御苑にある、「凝華洞跡のイチョウ」と呼ばれる大銀杏も有名です。格調高く直線的に整えられた御苑の中、この大銀杏は小高い丘のようなところにあるのが印象的で、丘の造るなだらかな曲線が柔らかな風景を生み出しています。

凝華洞跡は、1864年に勃発した蛤御門の変の頃、会津藩主で京都守護職の松平容保が仮宿舎としていた屋敷があった場所で、戦乱の際には、ここで容保が指揮を執ったとされています。蛤御門には、その際の弾痕も残ります。銀杏の木々はどんな気持ちで時の移り変わりを見つめていたのでしょうか。

第12回「立春の朝に若水を汲む / 京都御苑 白雲神社」
https://www.kyoto-tokutoseki.jp/feature/hanadayori/2023/02/25/3125/

でもご紹介した、京都御苑内の白雲神社にも銀杏の木を見つけました。
私は以前より、こちらの絵馬に描かれた妙音弁財天様が好きなのですが、作者はなんと白雲神社の宮司様で、先の上御霊神社の宮司も兼任されているとのことを最近になって知って驚きました。弁財天様は音楽や芸術などの分野を司るともされる女神様です。
また、弁財天様のお使いが蛇とされています。来年は巳年となりますので、初詣には例年よりもお詣りされる方が増えるかもしれません。

「私も、絵の道で少しでも多くの方々のおよろこびになれますように。そして、皆さまにとりまして、来る年が輝かしく素晴らしいものとなりますように」
黄葉を楽しむだけではなく、しっかりと手を合わせて年末のお詣りもさせていただきました。
今年も「花をえがく 日本画家 定家亜由子の京の花便り」にご縁いただきました皆さまに心より感謝申し上げます。どうぞよいお年をお迎えください。来年もよろしくお願いいたします。

この記事を書いた人
定家亜由子
 
京都在住の日本画家。伝統画材にて花を描く。
高野山大本山寶壽院 襖絵奉納
白沙村荘 橋本関雪記念館 定家亜由子展等、個展多数。
画文集『美しいものを、美しく 定家亜由子の日本画の世界』(淡交社) 刊行。  
 

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