ここからしか見えない京都
  

格式高い尼門跡寺院で雅なひとときを

南北朝時代になると、京都では皇女や公家の息女が門主を務める(あま)門跡(もんぜき)と呼ばれる寺院がつくられた。幼いころに入寺し、尼僧(にそう)として修行をするほか、宗教儀式、祭事、作法を学び、文学や芸術にも親しんだ。江戸時代になると尼寺とは一線を画し、比丘尼(びくに)御所(ごしょ)、あるいは尼御所と呼ばれるようになった。

室町時代、臨済宗の寺格を定めた五山制度にならい、「京都(きょうと)(あま)五山(ござん)」が定められた。その一の位であった景愛寺の法灯を受け継ぐのが大聖寺(だいしょうじ)だ。足利義満が造営した「花の御所」跡に建立され、歴代24人の内親王が住持を務めた格式高い寺院だ。東京の青山御所から移築された本堂は華麗な障壁画で飾られ、江戸時代中期につくられた庭園は「かんざし灯籠」などを配した御所風の優美な枯山水を呈する。また書院の「(みや)御殿(ごてん)」は、光格天皇の皇女が入寺したときに千両を下賜して御所風に建立したという。まさに「御寺(おてらの)御所(ごしょ)」の別名にふさわしく、そこかしこに優雅さをたたえている。通常は非公開だ(不定期に特別公開されることもある)。

正親町(おおぎまち)天皇の皇女が入寺の際に綸旨(りんじ)(天皇の命令)を受け、尼寺一位になった大聖寺

大聖寺のすぐ近くにあるのが宝鏡寺。「人形寺」としても親しまれ、折々に御所から送られたという雛人形や猩々(しょうじょう)人形を数多く収蔵しており、春と秋には特別拝観として人形展を開催している。特別拝観では、ふだん非公開となっている堂宇(どうう)の内部や、四季の花に囲まれた庭園を観賞することができる。

宝鏡寺では特別拝観時に雅趣あふれる人形たちを観賞できる

ほかにも京都の尼門跡寺院には崇光(すこう)天皇の御所「入江(いりえ)殿(どの)」を寺院にした三時(さんじ)()恩寺(おんじ)や、後水尾天皇が好んだというツバキが100種類以上植えられた「椿の寺」霊鑑寺などがあり、いずれも特別拝観時のみ公開されている。

小ぢんまりとした中に、松や灯籠、枯れ池がバランスよく配された三時知恩寺の庭園
尼寺らしい清楚な雰囲気が漂う霊鑑寺。本堂は徳川11代将軍家斉の寄進によるもの

【放送時間】
京都浪漫 悠久の物語
「みやびな御所文化を受け継ぐ尼門跡寺院をめぐる」
2021年11月15日(月) よる8時~8時53分
BS11(イレブン)にて放送

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