ここからしか見えない京都
  

表情豊かで端麗な唯一無二の仏様に出合う

歴史ある寺院をめぐる楽しみの一つは、美しい仏様に出合うことだ。なかでもの稀有な仏様に出合えるのが上京区の大報恩寺、そして亀岡市の(あな)太寺(おじ)、南丹市の清源寺だ。

通称「千本釈迦堂」と呼ばれる大報恩寺は鎌倉時代の建立。明徳の乱や応仁の乱の戦火を免れ、本堂は市街地に残る最古の木造建築として国宝に指定されている。本堂内陣の本尊・釈迦如来坐像は秘仏だが、霊宝殿で快慶作の「釈迦十大弟子像」と、定慶(じょうけい)作の「六観音菩薩像」を拝顔できる。「釈迦十大弟子像」は高さ90㌢ほどの玉眼入り木造彫刻だが、いずれも表情豊かでどこか人間味を感じさせる。さらに「六観音菩薩像」にいたっては、光背の緻密な彫刻や衣や肌の滑らかな質感が美しく、仏師の技に魅了される。

何かを語りかけてくるような表情の「釈迦十大弟子像」
精緻な細工が施された「六観音菩薩像」は定慶の技が光る

亀岡市にある穴太寺は西国観音霊場二十一番札所で、四季折々の花が美しい庭園は京都府の名勝に指定されている。705年(慶雲2年)文武天皇の勅願により薬師如来像(秘仏)を安置して建立された古刹だ。そして札所の本尊である観世音菩薩像は、平安時代の郡司・宇治宮成が京都から仏師を招いて造立したもの。この仏像には「身代わり観音」の逸話が伝わる。像を造った仏師に褒美として愛馬を差し出すも、馬が惜しくなった宮成は家来に命じて仏師を弓で射殺し、馬を奪い返した。ところが家に戻ると、射ったはずの矢は観世音菩薩像の胸に刺さり、仏師は健在であったという。33年に一度しか開帳されない秘仏だが、厨子に向かってありがたく拝礼したい。さらに須弥壇の右奥に安置されている釈迦如来涅槃像は「なで仏」と呼ばれ、撫でた箇所の病気が快復するというご利益がある。

穴太寺の釈迦如来涅槃像。布団で横たわっている姿がとても庶民的

南丹市の清源寺は江戸時代の修行僧、木喰(もくじき)上人が彫った仏像が22体安置されている。旅先で神仏を奉納しながら諸国巡礼を行っていた木喰上人。千体目が安置されているがこの寺だ。丸みを帯びた体で顔はにっこりと笑い、「微笑仏(みしょうぶつ)」とも呼ばれる。見ているだけでこちらもくすりと微笑してしまう。

清閑とした雰囲気が漂う清源寺

【放送時間】
京都浪漫 悠久の物語
「仏師と巡る京の仏像~千本釈迦堂・穴太寺・清願寺~」
2022年1月24日(月) よる8時~8時53分
BS11(イレブン)にて放送

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