京都市左京区と右京区の境にある衣笠山。周囲には世界遺産の鹿苑寺(金閣寺)や仁和寺、龍安寺など、古刹・名刹が点在する。
眞如寺は1286年(弘安9年)に無外如大が庵を結んだことに始まる。後に夢窓国師を迎え、室町幕府の手厚い保護によって伽藍を整備。その後、足利尊氏の葬儀も行われた。衣笠山の麓の豊かな緑を有する境内では、例年春と秋に特別拝観「かしきりもみじ」(今秋は未定)が行われ、客殿や書院が公開される。書院から眺める紅葉は、まるで絵画を見るかのように鮮やか。定員制のためゆったりと堪能できる。また客殿からはしっとりと苔むした庭園を眺望。江戸時代の絵師・原在中による極彩色の襖絵も見ものだ。
眞如寺に隣接する等持院は1341年(暦応4年)、足利尊氏が夢窓国師を開山として創建した。方丈と廊下でつながれた霊光殿には、本尊や室町幕府の歴代将軍(5代義量、14代義栄を除く)の木像ほか、石清水八幡宮から移された徳川家康像が安置されている。室町時代には足利将軍家の菩提所として隆盛を極めたが、禄や檀家の減少によって衰退。だが大正時代、映画の父・マキノ省三監督が境内にスタジオを建て、いくつもの映画を撮影・制作し、等持院は“映画人の町”として知られるようになった。スタジオ移転後、方丈は映画撮影の損傷や経年劣化により、2017年から4年の歳月をかけて修復。庭園中央には尊氏の墓、宝筐印塔が静かにたたずんでいる。
衣笠山麓のもう一つの見どころは櫻谷文庫だ。明治期を中心に活躍した近代日本画家・木島櫻谷の旧邸宅で、創作活動に励んだ建物が当時のまま残されている。館内には櫻谷の自然や動物画、習作、写生帖ほか、彼のコレクションなど1万点近くを収蔵。和館、洋館、画室の3棟からなる大正期の住宅は、国の登録有形文化財に指定されている。通常は非公開だが春秋のみ特別公開する。
制作著作:KBS京都 / BS11
【放送時間】
京都浪漫 悠久の物語
「衣笠の夏景色~眞如寺・等持院・櫻谷文庫を訪ねる~」
2022年7月18日(月) よる8時~8時53分
BS11(イレブン)にて放送