ここからしか見えない京都
  

都の歴史は御所の東にあり

1869年(明治2年)まで天皇の住まいだった京都御所。明治以降、御所周辺は公園「京都御苑」として整備されたが、いまもなお皇室や公家にゆかりの格式高い神社仏閣が残る。

御所の東、清和院御門近くにあるのが梨木(なしのき)神社だ。江戸時代後期の公卿・三條實萬(さねつむ)の邸宅跡に、1885年(明治18年)實萬を祭神として創建。萩の名所として知られ、毎年9月の「萩まつり」では、舞楽や狂言、舞、尺八、琴などの奉納行事も行われる。また京都三名水といわれる「染井」の水が湧き、昨年8月、この水を使ったコーヒーが楽しめるカフェが境内にオープンした。

学問、文芸の神様として崇敬を集める梨木神社。境内には「雨月物語」の上田秋成や、物理学者の湯川秀樹の歌碑が建立されている

梨木神社の向かいにある廬山寺(ろざんじ)は紫式部の邸宅跡とされ、白砂と苔の平安朝風「源氏庭」には夏の間、紫の美しい桔梗が咲き誇る。開山は比叡山中興の祖、元三大師(がんざんだいし)良源(りょうげん)。大師が疫病の祈祷をしている姿を描いた「角大師(つのだいし)護符」は、疫病神の災厄から逃れることができるといわれ、コロナ禍の昨今で再注目されている。毎年2月3日に執り行われる「鬼おどり」は、京都で最も古い節分の行事だ。

廬山寺の境内は、紫式部が「源氏物語」を執筆したといわれる邸宅跡。平安朝の庭園を眺めながら、いにしえに思いを巡らせたい

廬山寺に隣接する清浄華院(しょうじょうけいん)は、860年(貞観2年)清和天皇の勅願により、天台宗の慈覚大師円仁が宮中に禁裏内道場として建立した。寺の名は「浄土に咲く蓮の華のように、清らかな修行ができる場所」という願いを込めて名づけられたという。大殿(御影堂(みえいどう))の内陣中央には浄土宗を開いた法然上人像、東壇には天皇や皇族の位牌、西壇には元は秘仏だった本尊「泣不動尊」(現在は常時開帳)が祀られている。建物の随所に菊花紋があしらわれ、皇室ゆかりの格式をいまも残す。

清浄華院の大殿。内陣中央には自ら刻んだという、若々しく精悍な顔立ちの法然上人像が祀られている

さらに清浄華院の北隣にあるのが本禅寺だ。こちらも江戸時代後期、有栖川宮家の祈願所となった由緒ある寺院。本堂は珍しい漆喰の蔵造りで、梵鐘は徳川家康が大坂の陣に陣鐘として使用し、後に家臣の大久保彦左衛門が奉納した。境内には彦左衛門の墓が立つ。

日蓮上人が持仏としていたという釈迦如来立像(秘仏)を安置する本禅寺の立像堂(りゅうぞうどう)

制作著作:KBS京都 / BS11

【放送時間】
京都浪漫 悠久の物語
「御所の東の歴史秘話~梨木神社・廬山寺・清浄華院・本禅寺~」
2023年2月13日(月) よる8時~8時53分
BS11(イレブン)にて放送

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