紅葉の名所として知られる東福寺。鎌倉時代の摂政・九條道家(くじょうみちいえ)が、奈良の東大寺、興福寺になぞらえて“東”と“福”の文字を取り、19年の歳月を費やして京都最大級の大伽藍を造営した。現在、京都国立博物館が特別展「東福寺」(~12月3日)を開催中だが、毎年3月14日~16日の涅槃会(ねはんえ)に特別公開している東福寺の国宝三門を、この特別展に合わせて公開している。ふだん観ることができない楼上内部には、梁や柱に画家・吉山明兆(きっさんみんちょう)による極彩画が描かれ、宝冠釈迦如来(ほうかんしゃかにょらい)などの仏像群が並ぶ。また涅槃会では横6メートル、縦11メートルにおよぶ明兆作の大涅槃図が本尊として掛けられるのだが、こちらも本堂で特別公開されるので楽しみだ。東福寺といえば、方丈の東西南北の四方に配された本坊庭園も有名だ。作庭家・重森三玲によって1939年に完成したもので、鎌倉時代の質実剛健な風格をたたえながら、現代芸術の抽象的構成を取り入れた庭園として知られる。
東福寺には25もの塔頭があり、そのうちの光明院(こうみょういん)と芬陀院(ふんだいん)は通年、一般公開している。光明院の庭園も、すべて重森三玲の手によるものだ。山門を入ってすぐの「雲嶺庭(うんりょうてい)」には、勝負の神様「摩利支尊天」が鎮座。また本堂前に広がる「波心庭(はしんてい)」は、苔と砂の見事な調和を見せる枯山水で、紅葉シーズンはカラフルに彩られることから「虹の苔寺」とも称される。東福寺本坊庭園と同じ1939年に造られた。
芬陀院は江戸時代の火災後、桃園天皇の皇女・恭礼門院(きょうらいもんいん)の旧殿が下賜されたと伝わる、由緒ある建物。室町時代の水墨画家・雪舟作の名庭を伝え、またの名を「雪舟寺」とも呼ばれる。枯山水の南庭「鶴亀の庭」は雪舟によって作庭されたが、火災や歳月により荒廃し、1939年に重森三玲が一石の補足もなく復元した。その際に重森は東庭を新たに手掛け、南庭は亀島を中心に、東庭は鶴島を中心に構成されているので、作庭の意図をじっくりと見比べてみてはいかがだろう。
制作著作:KBS京都 / BS11
【放送時間】
京都浪漫 悠久の物語
「紅葉の名所東福寺と塔頭寺院~禅のこころと美~」
2023年11月13日(月) よる8時~8時53分
BS11(イレブン)にて放送