近畿2府4県と岐阜県をめぐる西国(さいこく)三十三所巡りは、日本最古といわれる観音巡礼だ。すべてまわることが困難な人のため、後に写し霊場として置かれたのが京都洛西(らくさい)観音霊場だ。現在は、善峯寺(よしみねでら)から願徳寺(がんとくじ)までの33カ寺と番外4カ寺が札所となっている。
大原野にある善峯寺は、京都洛西観音霊場の1番札所。平安時代に源算(げんざん)上人が、自ら刻んだ十一面千手観世音菩薩立像(りゅうぞう)を堂に祀ったのが始まりとされる。徳川幕府5代将軍・綱吉の生母・桂昌院(お玉)が綱吉の出生に感謝し、伽藍の改修や什物を寄進。下級武士の家の出から将軍の生母にまで昇りつめたことから「玉の輿(こし)」という言葉が生まれたという、開運出世のご利益で有名だ。山腹に広がる約3万坪の境内には四季折々の樹木や花が彩り、なかでも樹齢600年以上、全長約37メートルという「遊龍(ゆうりゅう)の松」(国の天然記念物)は、地を這うように伸びる姿が圧巻だ。
16番札所になる泉福寺(せんぷくじ)の本尊は、不空羂索(ふくうけんじゃく)観世音菩薩坐像。「不空」は、信じれば必ず願いが叶い、空(むな)しい思いをさせないという意味で、「羂索(けんさく)」は古代インドで猟や戦闘に使われた捕縛(ほばく)用の縄のことを指す。つまり、あらゆる人々の悩みを逃がすことなく救済し、願いを叶えるという意味がある。8本の手と3つの目があることから「三つ目観音」の名で親しまれ、閏年(うるうどし)にのみ開帳される秘仏だ。健康長寿、病気治癒、財福授与、極楽浄土に行けるなど、さまざまなご利益がある。
33番札所の宝菩提院(ほうぼだいいん)願徳寺は、京都一小さな寺といわれているが、国宝の本尊・如意輪観世音菩薩半跏像(にょいりんかんぜおんぼさつはんかぞう)を一目見ようと拝観者が絶えない。平安時代前期作と伝わり、大きさは約88センチで彩色は施されていない。やさしく穏やかな表情と、生身の人間のような体のなめらかさ、カヤの木彫りなのに柔らかそうに見える衣など、見る者を魅了してやまない。
番外札所4カ寺のうちの1つが正法寺(しょうぼうじ)。江戸時代には桂昌院の帰依を受けて徳川家代々の祈願所となった。「西山のお大師さん」として親しまれ、本堂の聖観世音菩薩像は弘法大師が42歳のときに彫ったと伝わり、厄難消除の仏さまとして古くから信仰されてきた。全国から集められた名石が、15種類の動物の姿にも見える庭園「宝生苑」は、別名「鳥獣の石庭」として知られる。
制作著作:KBS京都 / BS11
【放送時間】
京都浪漫 悠久の物語
「京都洛西観音霊場めぐり~善峯寺・泉福寺・願徳寺・正法寺~」
2024年2月19日(月) よる8時~8時53分
BS11(イレブン)にて放送