ここからしか見えない京都
  
嵐山の桜は鎌倉時代、後嵯峨上皇が離宮造営にあたり、奈良の吉野山から数百株の桜を移植したのが始まり
撮影:中田 昭

京都随一の景勝地、嵯峨嵐山で桜を愛でる

四季折々の変化に富む嵐山と大堰(おおい)川の清流、そこに架かる渡月橋と北へ広がる嵯峨野周辺は、京都随一の景勝を誇る。

嵯峨嵐山の桜の名所といえば大覚寺。平安時代初期、嵯峨天皇が離宮「嵯峨院」を建立、それが後に大覚寺となった。勅使門(ちょくしもん)脇のシダレザクラは寺の象徴的な存在だが、境内東に広がる大沢池の桜もまた圧巻だ。大沢池は平安時代に嵯峨天皇が中国の洞庭湖を模して造られたという、日本最古の庭池(ていち)。例年3月下旬から4月上旬にかけて、ソメイヨシノやヤマザクラなど約500本が咲き乱れる。さらに通常非公開の霊宝館が公開され、「春季名宝展」が開催中だ。今年は「源氏物語と嵯峨野古典文学めぐり」をテーマに、寺に伝わる「源氏物語」の古写本を初公開するほか、平安時代後期の仏師・明円(みょうえん)作の「五大明王像」を公開する。

桜が水面に映し出され、一幅の絵画のように美しい大覚寺の大沢池 
撮影:中田 昭

早咲きから遅咲きまで約12種、30本の桜に彩られるのが車折(くるまざき)神社。平安時代後期の儒学者・清原頼業(きよはらのよりなり)を祭神とし、頼業が生前、桜を愛でたことから、その廟に多くの桜が植えられ、建立当初から「桜の宮」と呼ばれた。ひときわ人気が高いのが、明治から昭和初期に活躍した画家・冨田渓仙(けいせん)が献木した「渓仙桜」。淡色の可憐な花をつけるシダレザクラが、例年3月下旬に優美な姿を見せる。境内には摂社がいくつかあるが、多くの芸能人が参拝し、名前が書かれた玉垣がぎっしりと並ぶのが芸能神社だ。好きな芸能人の名前を探す参拝客も多く、嵐山を代表する名所の1つにもなっている。

車折神社の中でも早咲きの渓仙桜。参拝客の目を引く圧倒的な枝ぶり
撮影:中田 昭

京都を代表する名所の1つ、「竹林の小径」を抜けたところにある大河内(おおこうち)山荘庭園も、嵯峨嵐山ならではの景勝が楽しめる。昭和の映画スター・大河内傳次郎が、小倉山の南斜面に30年の歳月をかけて造り上げた、約6000坪の広大な回遊式庭園だ。山荘の中心をなす「大乗閣(だいじょうかく)」は、数寄屋造りや寝殿造りなど、日本の伝統的な住宅様式を複合させた独特な屋根形式や意匠が特徴。さらに山上にある展望台からは、桜色に染まった嵐山を望むことができる。

大河内山荘庭園の大乗閣。ソメイヨシノやヤマザクラなどが庭園を彩る
提供:大河内山荘

大河内山荘庭園の展望台から、嵐山中腹の斜面にへばりついているように見えるのが大悲閣(だいひかく)千光寺だ。その姿から「天空の寺」とも呼ばれる。江戸時代初期に活躍した京都の豪商、角倉了以(すみのくら りょうい)が、もともと嵯峨野にあった千光寺を、保津川(大堰川)を見下ろす嵐山に移し、開削工事の犠牲者を弔ったという。大堰川の切り立った岩肌に建つ客殿「大悲閣」からは、嵐峡の絶景を眺めることができる。

自然の中に溶け込み、まるで浮いているかのように見える千光寺
撮影:中田 昭

制作著作:KBS京都 / BS11

【放送時間】
京都浪漫 悠久の物語
「嵯峨嵐山桜紀行~写真家と巡る大覚寺界隈~」
2024年4月15日(月) よる8時~8時53分
BS11(イレブン)にて放送

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