毎年、春と秋の観光シーズン限定で、京都市の蹴上(けあげ)と滋賀県大津市を結ぶ「びわ湖疏水(そすい)船」が就航している。2024年の春からは航路が延伸し、疏水から琵琶湖に出て、「大津港」の乗下船場まで行けるようになった。上り便のルートは蹴上の乗下船場から、山科を経て大津港までのおよそ9.3キロの旅だ(春季の大津港までの運航は4月7日で終了)。
疏水沿いには名所が多数あるが、それらを代表するのが平安神宮だ。平安遷都1100年を記念して、1895年(明治28年)に創建。第50代桓武天皇と第121代孝明天皇を祭神とし、社殿は平安京大内裏(だいだいり)の朝堂院(ちょうどういん)の建物を8分の5の大きさで再現している。壮麗な社殿もさることながら、大きな見どころとなっているのが明治の造園家、7代目小川治兵衛(おがわじへえ)が作庭した池泉回遊式庭園の「神苑(しんえん)」だ。社殿を取り囲むように東・中・西・南の4つの庭からなり、ベニシダレザクラやハナショウブ、紅葉、雪景色など四季折々に風情あふれる景観をなす。
「三井寺(みいでら)乗下船場」からすぐ近くにあるのが、門跡(もんぜき)寺院の圓満院(えんまんいん)だ。987年(寛和3年)に、第62代村上天皇の第3皇子、悟円が創建。開基当時は平等院と呼ばれたが、後に名前を譲り、現在の名称となった。京都御所から移築された風格ある宸殿(しんでん)は、こけら葺きの入母屋造で国の重要文化財。宸殿南側にある「三井(みい)の名庭」は室町時代の絵師、相阿弥(そうあみ)の作といわれる池泉鑑賞式の庭園で、春はヤマザクラ、夏は天然記念物のモリアオガエルを目にすることができる。境内にある「大津絵美術館」も見逃せない。大津絵とは江戸初期、大津の宿場で名もなき絵師たちが店を並べ、街道行き交う人に縁起物として神仏画を売ったのが始まり。美術館には初期から近世に至るまでの大津絵が展示され、貴重な資料も観賞できる。また寺では座禅、投扇興(とうせんきょう)、和装の日本文化体験も行っている。
圓満院の北にあるのが、「近江大津宮」の跡地に建つ近江神宮だ。近江の国の発展は、第38代天智(てんじ)天皇が大津宮(おおつのみや)に都を置いたことによるといわれた。明治の中頃になると、天智天皇を祀る神宮の創建運動が高まり、1940年(昭和15年)に創建された。天皇が漏刻(ろうこく)、いわゆる水時計を最初に作ったと伝わり、6月10日の「時の記念日」には、時計業界の関係者が新製品などを献納し、時計の歴史の進展を報告する「漏刻祭」が行われる。境内にある「時計館・宝物館」は、時計業界から奉納された和時計をはじめ、各種の古時計などが展示されている。
制作著作:KBS京都 / BS11
【放送時間】
京都浪漫 悠久の物語
「びわ湖疏水船で行く 春の旅~平安神宮・圓満院・近江神宮~」
2024年4月22日(月) よる8時~8時53分
BS11(イレブン)にて放送