ここからしか見えない京都
  

西来院で創建以来初の一般公開

京都最古の禅寺・建仁寺(けんにんじ)。臨済宗建仁寺派の大本山として、鎌倉時代の創建から変わらぬ静かな時間が流れる。明治時代の廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)で多くの塔頭が失われ、現在は14カ寺が残る。その中の1つ、西来院(せいらいいん)は、建仁寺の第11代住職を務めた蘭渓道隆(らんけいどうりゅう)が住んでいた、由緒ある寺院だ。道隆の遺徳をしのび、2023年から遠忌(おんき)事業として「令和の大改修」が実施された。今年3月に落慶法要が営まれ、創建以来、初の特別拝観を7月31日まで行っている。

玄関前庭園「九華青蓮(きゅうかしょうれん)」はブルーをテーマにし、苔に覆われた築山(つきやま)に、徳島県の阿波青石(あわあおいし)を9つ配して、中国の霊山「九華山」を表現している。また“キーヤン”こと、壁面絵師の木村英輝(きむらひでき)さんが手掛けた、青龍が対になった本堂の“阿吽(あうん)の龍”の屏風(びょうぶ)「登龍門」を、庭園と向き合うように展示。庭の隅には「ブルーボトルコーヒー」のコーヒートラックが期間限定で出店し、コーヒーを楽しみながら鑑賞できる。

玄関前の庭園「九華青蓮」。今回の改修では園芸家、西畠清順(にしはたせいじゅん)さんも参加し、蘭の花が植えられた
「キーヤンブルー」を基調とした木村さん作の屏風。ダイナミックでありながら、龍の表情がどこか愛らしい

本堂前の庭は、道隆が修行した中国・四川省の峨眉山(がびざん)と雲海を表現した「峨眉乗雲(がびじょううん)」。巨石は帰国を果たせなかった蘭渓道隆(らんけいどうりゅう)の思いをしのび、中国仏教協会から贈られたものだ。庭園は中根庭園研究所の造園家、中根行宏(ゆきひろ)さんと直紀さん兄弟が作庭した。2人は島根県の足立美術館庭園やアメリカのボストン美術館天心園などを設計した昭和を代表する作庭家、中根金作の孫だ。さらに彫刻家・樂雅臣(らくまさおみ)さんが作庭した中庭には、樂さん作の石器を設置。竹をはじめとする植栽や白砂と、作品が見事に調和する。

450年続く樂(らく)焼の窯元で初の彫刻家となった雅臣さんは、中庭を作庭し、石器を制作した

本堂の天井で勇壮な姿を見せるのが、ビジュアルアーティスト陳漫(チェンマン)さんの「白龍図(はくりゅうず)」だ。東西13メートル、南北6メートルに、若い龍と年老いた龍を描き、“たとえ若い状態でも年老いた状態でも、私たちは常に成長し続けている。どんな状態でも修行は続いている”という禅の教えを2頭の龍で表現した。暗くなると蛍光塗料が光り、陳漫さんならではの遊び心が盛り込まれている。

写真家や画家として世界で活躍する中国人アーティスト、陳漫さんが描いた「白龍図」

道隆が伝えた禅の教えを今の時代に広めたい、そんな思いで進められた西来院の大改修。新しくなった庭や本堂で静かな時間を過ごしてみてはいかがだろう。

制作著作:KBS京都 / BS11

【放送時間】
京都浪漫 悠久の物語
「建仁寺塔頭・西来院~芸術家たちが集う令和の大改修~」
2024年5月20日(月) よる8時~8時53分
BS11(イレブン)にて放送

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