ここからしか見えない京都
  
萬福寺の大雄寶殿。上層の額の文字は隠元禅師によるもの
萬福寺の大雄寶殿。上層の額の文字は隠元禅師によるもの

早春の禅寺で普茶料理をいただく

宇治市の萬福寺は、創建360年以上の黄檗宗(おうばくしゅう)の大本山。中国から招聘(しょうへい)された隠元隆琦(いんげんりゅうき)禅師が開祖で、伽藍の配置、儀式、作法などの中国明朝様式が、いまも残されている。さらに隠元禅師が伝えた中国文化は、仏教界や江戸時代の文化にも大きく影響を及ぼした。その一つが中国風の精進料理、普茶(ふちゃ)料理だ。普茶とは「普(あまね)く大衆と茶を共にする」という意味を示し、座卓を囲み大皿に盛られた料理を分け合って食べるスタイルだ。2024年12月に萬福寺の大雄寶殿(だいおうほうでん)、天王殿(てんのうでん)、法堂(はっとう)の3棟が国宝に指定された。これを機会に普茶料理コースに新たに設けられたのが、僧侶による境内の案内と「特別普茶御膳」が堪能できる「1日1組限定PREMIUMコース」だ。予約は2人から可能で、通常非公開の東方丈(とうほうじょう)を特別に拝観、撮影することができる。

萬福寺の「特別普茶御膳」。PREMIUMコースでは、食事前に僧侶が境内を案内してくれる

萬福寺塔頭(たっちゅう)の宝善院は、1690年、独振性英(どくしんしょうえい)禅師によって創建された。こちらでも普茶料理が味わえるが、夜の坐禅「夜坐(やざ)」を組んだ後、薬膳料理と薬膳茶を味わう体験コースが人気を博している(予約サイト「Otonami」限定で受付)。薬膳料理は、普茶料理の基本的な考え方をもとに、副住職が手掛ける一汁一菜。食後に提供される鮮やかなピンク色の薬膳茶は、酸味と甘みが絶妙に調和する。

宝善院の人気の体験コースでは、副住職が考案した薬膳料理が登場

京都市北区にある閑臥庵(かんがあん)は、第108代天皇・後水尾(ごみずのお)法皇ゆかりの禅寺。王城鎮護のために、貴船から十干十二支九星(じっかんじゅうにしきゅうせい)を司る総守護神、鎮宅霊符神(ちんたくれいふじん)をこの地に勧請(かんじょう)したのが始まりという。竜宮門や本堂も中国様式で、屋根の上には萬福寺と同様の意匠が見られる。こちらでは京懐石普茶料理を提供。食事はすべて個室になっており、金箔の襖(ふすま)やブラックシャンデリアがしつらえられた部屋など、いずれもモダンな雰囲気。ライトアップされた幻想的な夜の庭園を眺めながら、普茶席が楽しめる。

境内がライトアップされ、本堂が幻想的に浮かび上がる閑臥庵
彩り豊かな閑臥庵の京懐石普茶料理。特別なひとときに味わいたい

普茶料理の食材には植物性タンパク質が多く、薬膳にも通じるという。体に優しく、季節感あふれる普茶料理を、早春の禅寺で味わってみたい。

製作著作:KBS京都 / BS11

【放送時間】
京都浪漫 悠久の物語
「早春の禅寺へ!萬福寺の国宝と普茶料理」
2025年2月17日(月) よる8時~8時53分
BS11(イレブン)にて放送

この記事を書いた人
旅行読売出版社 メディアプロモーション部
 
月刊「旅行読売」は1966年創刊の、日本で一番歴史がある旅行雑誌です。国内外に地域の魅力を発信して、交流人口を増やすことで、地域の発展に貢献することを目指しています。毎月28日発売。  
 

タグ一覧

#人気ワード