日本の伝統工芸品として紡ぎ続けられた西陣織の種類には、つづれ、緞子、経錦、絣などがありますが、その定義は染色した糸を使って模様を織り出す「先染めの紋織物」。糸を染色し、織り上げるまで20以上の工程があることからもわかるように、西陣織は高度な分業制に支えられています。産地問屋の「長谷川」はメーカーである織元と深くつながり、多種多彩な製品を扱うほか、製品企画やディレクションなどを行う、いわば業界のコンシェルジュ的存在。常盤さんは今回特別に、西陣織の製造工程を社長の長谷川浩一さんに案内していただきました。
「織紋意匠 鈴木」は産地問屋から注文を受けて、機屋に発注する織元。西陣織の特色である先染めの色糸を常時約1000種類ストックしています。美しい色使いに定評のある同社が得意とするのは、刺繍のような立体感が特徴の唐織。専務の鈴木丈夫さんは「正倉院展」で見た聖武天皇のものと伝わる七条袈裟に感動し、唐織の技法と草木染めで袈裟を再現しました。
現在西陣織で使われている織機は、手機、力織機、綴れ機の3種類ですが、鈴木さんは手機職人に依頼。手機は職人が手足を使い、経糸と緯糸を操って織り上げるので、力織機ではできない複雑な織物に向いています。簡単な紋様でも一反を織り上げるのに1週間、複雑なものでは3週間もかかってしまうとか。
西陣帯のデザインから織り上げまで一貫して行う織元「白綾苑大庭」は、精密な図案をコンピューターで作成しています。図案づくりは先染め紋織物の西陣織にとって、もっとも重要な工程です。図案を手掛ける女性社員は、ヒット商品を多数生み出しているとか。
そして職人の後継者不足が深刻なのが、手機の経糸に横糸を通す道具「杼」。京都市の「未来の名匠」に認定された「中村織物店」の4代目当主で、手機で金襴を織る中村亨さんも強い危機感を感じていました。そこで、デジタルデータでものづくりをする会社に協力を仰ぎ、なんと3Ⅾプリンターで杼の再現に成功したのです。
長い歴史に培われた西陣織。そのカタチは時代とともに進化し、作り手の努力によって新たな伝統が紡がれています。
【次回放送情報】
■京都画報 第7回「西陣ルネサンス」
BS11にて4月13日(水)よる8時~放送
俳優・常盤貴子さんが、京都をめぐり、ひもとく京都の“今”と伝統文化。京都の歴史を伝える、趣のある町並みには、和装がよく似合います。今回のテーマは、西陣織。日本を代表する伝統工芸でもある京都生まれの高級織物は、どのように生まれ、伝統を紡いできたのでしょうか。千年の都の洗練された美意識に育まれた、雅やかな西陣織の世界へご案内します。
※ 放送後、BS11オンデマンドにて4月13日 よる9時~ 2週間限定で見逃し配信いたします。