ここからしか見えない京都
  
西陣織は職人のこだわりときめ細やかな作業、京都人の感性と美意識が生み出す日本屈指の伝統工芸品 © KBS京都/TOKYO MX/BS11

平安時代から伝統を受け継ぎ、そして進化する西陣織

高度な分業制に支えられる「先染めの紋織物」

日本の伝統工芸品として紡ぎ続けられた西陣織の種類には、つづれ、緞子(どんす)(たて)(にしき)(かすり)などがありますが、その定義は染色した糸を使って模様を織り出す「先染めの紋織物」。糸を染色し、織り上げるまで20以上の工程があることからもわかるように、西陣織は高度な分業制に支えられています。産地問屋の「長谷川」はメーカーである織元と深くつながり、多種多彩な製品を扱うほか、製品企画やディレクションなどを行う、いわば業界のコンシェルジュ的存在。常盤さんは今回特別に、西陣織の製造工程を社長の長谷川浩一さんに案内していただきました。

長谷川さんの「各工程のスペシャリストが携わることで、高品質な織物を生んでいるのが西陣織の特徴」という説明に、一本の帯ができるまでの細かな工程に常盤さんは感動しきり © KBS京都/TOKYO MX/BS11

「織紋意匠 鈴木」は産地問屋から注文を受けて、機屋(はたや)に発注する織元。西陣織の特色である先染めの色糸を常時約1000種類ストックしています。美しい色使いに定評のある同社が得意とするのは、刺繍のような立体感が特徴の唐織(からおり)。専務の鈴木丈夫さんは「正倉院展」で見た聖武天皇のものと伝わる七条袈裟に感動し、唐織の技法と草木染めで袈裟を再現しました。

自身の還暦の記念に再現した七条袈裟を披露する鈴木さん。草木染は薄い色から染めて、乾燥と染色を繰り返すことで、深い色合いを出せるそう。鈴木さんは退色の変化さえも楽しみだそう © KBS京都/TOKYO MX/BS11

デジタルを駆使して伝統を守る

現在西陣織で使われている織機は、手機、(りき)織機(しょっき)(つづ)(ばた)の3種類ですが、鈴木さんは手機職人に依頼。手機は職人が手足を使い、経糸(たていと)(よこ)(いと)を操って織り上げるので、力織機ではできない複雑な織物に向いています。簡単な紋様でも一反を織り上げるのに1週間、複雑なものでは3週間もかかってしまうとか。
西陣帯のデザインから織り上げまで一貫して行う織元「白綾苑大庭」は、精密な図案をコンピューターで作成しています。図案づくりは先染め紋織物の西陣織にとって、もっとも重要な工程です。図案を手掛ける女性社員は、ヒット商品を多数生み出しているとか。

白綾苑大庭で帯の設計図を見せてもらった常盤さん。こちらでは丈の長い模様で織り上げるのが特徴。繰り返しのパターンが長いことで、前と後ろに同じ柄が出てくることがなく、色彩感豊かな表現ができるとか © KBS京都/TOKYO MX/BS11

そして職人の後継者不足が深刻なのが、手機の経糸に横糸を通す道具「()」。京都市の「未来の名匠」に認定された「中村織物店」の4代目当主で、手機で金襴を織る中村亨さんも強い危機感を感じていました。そこで、デジタルデータでものづくりをする会社に協力を仰ぎ、なんと3Ⅾプリンターで杼の再現に成功したのです。

長い歴史に培われた西陣織。そのカタチは時代とともに進化し、作り手の努力によって新たな伝統が紡がれています。

専門の職人によって一つひとつ手作業で作られてきた杼。西陣で残る職人は一人だけ。伝統を守るために、時代の流れとともに新しいものを生み出す。中村さんは“いま”を生きる職人だ © KBS京都/TOKYO MX/BS11

【次回放送情報】
■京都画報 第7回「西陣ルネサンス」
BS11にて4月13日(水)よる8時~放送

俳優・常盤貴子さんが、京都をめぐり、ひもとく京都の“今”と伝統文化。京都の歴史を伝える、趣のある町並みには、和装がよく似合います。今回のテーマは、西陣織。日本を代表する伝統工芸でもある京都生まれの高級織物は、どのように生まれ、伝統を紡いできたのでしょうか。千年の都の洗練された美意識に育まれた、雅やかな西陣織の世界へご案内します。

※ 放送後、BS11オンデマンドにて4月13日 よる9時~ 2週間限定で見逃し配信いたします。

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旅行読売出版社 メディアプロモーション部
 
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