京都がにわかに活気づく7月、八坂神社の祭礼「祇園祭」の神事が、1か月にわたって繰り広げられます。最大の見どころは7月17日(前祭)、24日(後祭)に行われる山鉾巡行。長く続くコロナ禍で中断を余儀なくされましたが、今年は感染対策をしながら3年ぶりの巡行となりました。常盤貴子さんも生の祇園祭を体験。祭りを深く知るために、祇園祭山鉾連合会理事長の木村幾次郎さんを訪ね、「山鉾は八坂神社の神輿渡御の清めの神事。神輿の先を行って、悪い神様を藁とか松など依り代(神霊が寄り付くもの)に集めて処分する。そこにお神輿が来られる」など、祇園祭の本来の意味合いを教わります。
前祭で先頭を進む長刀鉾は唯一、生きたお稚児さんが乗る曳き鉾です。案内役の華道未生流笹岡家元・笹岡隆甫さんも、この長刀鉾でお稚児さんを務めたことがあるそう。鉾の先端に取り付けられている大長刀には疫病や邪悪なものを払う力があるとされ、お稚児さんが鉾の上で舞う「泰平の舞」には巡行の道中を清め、疫病退散を祈る意味があるそう。
さらに祇園祭の時期だけ特別に作られるお菓子があります。八坂神社南参道にある老舗料亭「二軒茶屋 中村楼」の稚児餅は、竹串に刺した細長い餅の表面に、白味噌を付けて焼いた素朴な菓子。店内で味わうこともできます。
祇園祭に欠かせないのが鱧。創業241年の京寿司専門店「いづう」は、旬の盛りの時期だけ鱧姿寿司を販売しています。硬い小骨が多い鱧は熟練の職人によって骨切りされ、家伝のかえしで焼き上げた、まさに珠玉の逸品です。
山鉾巡行の3日前から行われるのが宵山です。各町自慢の山鉾があちこちに立ち並び、豪華絢爛な懸装品(鉾を飾る装飾品)を間近で見られる絶好の機会。宵山期間中に行われるのが屏風祭です。旧家や老舗が屏風、調度品、美術品などを披露し、格子越しに通りから鑑賞することができます。
山鉾の懸装品はいずれも見事ですが、なかでも「動く美術館」と評されるのが月鉾。屋根裏の金地彩色草花図は円山応挙の筆、破風蟇股の彫刻は左甚五郎の作と伝えられます。また、屋根を支える4本の柱に施された飾り金具の出来は「山鉾の中で最高のもの」と言われる豪華なもの。そしてもう一つ、今年の祇園祭のビッグニュースとなっているのが、196年ぶりに復活した鷹山です。江戸時代後期の暴風雨で壊れて以来、巡行に出ない「休み山」でした。それが保存会の尽力により、ついに眠りから覚め、都大路を巡行したのです。知れば知るほど奥が深い祇園祭。来年の祇園祭がいまから待ち遠しい限りです。
【次回放送情報】
■京都画報 第11回「復活!祇園祭山鉾巡行」
BS11にて8月17日(水)よる8時~放送
※ 放送後、BS11+にて8月17日(水) よる9時~ 2週間限定で見逃し配信いたします。