ここからしか見えない京都
  

初冬に楽しむ美術と美食

目と舌で味わう京都の文化

寒い季節でも旅を満喫できる京都。冬はアートスポットや美食探しの旅がおすすめです。今回は常盤貴子さんが嵐山から祇園へ“ちいさな美術館”を訪ね歩きます。

2019年、渡月橋を一望する嵐山の中心に誕生したのが福田美術館です。コンセプトは「100 年続く美術館」。洗練された外観や蔵をイメージした展示室、縁側を思わせる廊下、網代文様に着想を得た壁面ガラスなど、日本的な意匠を施した空間は、そこにいるだけで心を穏やかにしてくれます。現在、福田美術館では「芭蕉と蕪村と若冲」を開催中(2023年1月9日まで)。展覧会では与謝蕪村、伊藤若冲の作品ほか、松尾芭蕉の自筆自画「野ざらし紀行図巻」を特別公開しています。この図巻は紀行文とともに挿絵が描かれており、松尾芭蕉が絵画にも強い関心を示していたことがわかる貴重な資料なのだとか。

福田美術館で公開されている「野ざらし紀行図巻」は半世紀ぶりに見つかったもの。俳句や文章に合わせ、21の場面が描かれている ©KBS京都/TOKYO MX/BS11

福田美術館から徒歩3分ほど、桂川のほとりに京都吉兆嵐山本店があります。1948年に吉兆嵯峨支店として開店。「吉兆」創業者の湯木貞一は、料理人として初めて文化功労者に選ばれた人物。創業者の精神を継いだ3代目・徳岡邦夫さんは、ミラノ万博や国際的な食の会議に参加するなど、日本料理を世界へ発信しています。料理の器にもこだわり、北大路魯山人作の筒向(つつむこう)や美しい螺鈿(らでん)を施した椀などを使い、目も舌も楽しませてくれます。

京都吉兆嵐山本店で供された八寸。湯木貞一が提唱した「お客様を幸せにする料理やもてなし」の理念がいまも受け継がれている ©KBS京都/TOKYO MX/BS11

ちいさな美術館で“まだ見ぬ京都の美”に浸る

阪急嵐山駅から一駅、松尾大社近くに知る人ぞ知るアートスポット、京都花鳥館があります。ドイツの名窯マイセンのコレクションや、日本画家・上村(うえむら)淳之(あつし)氏の作品を展示する私設美術館です。マイセンはバロック様式やロココ様式、新古典主義など、時代ごとに新しい様式を取り入れたことから多彩な表情を持っています。同館のコレクションは、貼花(ちょうか)装飾が施された“スノーボール”と呼ばれる作品が中心。器のまわりに花をまとわせた繊細な表現は、職人の技術の高さを物語っています。さらに花鳥画で知られる上村淳之氏の作品もまた花と鳥が題材。共通のテーマで、西欧と日本の芸術を結び付けた特色ある展示を行っています。

京都花鳥館のコレクションは館長夫妻が長年、収集してきたもの。およそ150年前に作られた美しい器に、常盤さんも心を奪われたよう ©KBS京都/TOKYO MX/BS11

祇園で300年続く和菓子の老舗、鍵善良房(かぎぜんよしふさ)。15代目当主の今西善也さんが、祇園町の文化を継承するために2021年、私設美術館「ZENBI」をオープンしました。鍵善良房が秘蔵する美術品を紹介するほか、時代を反映した様々な企画展を打ち出し好評を博しています。現在はポップアートの旗手、アンディ・ウォーホルが1974年に京都を訪れた際に撮影された「原榮三郎が撮った京都」を開催中(2023年2月12日まで)。ちいさな美術館で、見たことがない京都の一面に触れてみてはいかがでしょう。

鍵善良房の名物は吉野産の葛粉で作ったくずきり。自家製蜜は白蜜と沖縄産の黒糖を使った黒蜜の2種類で、上品な味わいが人気だ ©KBS京都/TOKYO MX/BS11
老舗の和菓子店が造った美術館で、アンディ・ウォーホルの写真展示に、「意外な組み合わせ」と驚きを隠せない常盤さん ©KBS京都/TOKYO MX/BS11

【次回放送情報】
■京都画報 第15回「初冬の嵐山から祇園へ-ちいさな美術館-」
BS11にて12月14日(水)よる8時00分~8時54分放送

※ 放送後、BS11+にて12月14日(水)よる9時~ 2週間限定で見逃し配信いたします。

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