京都を代表する味覚のひとつが京漬物。なかでも「すぐき漬」「千枚漬」「しば漬」は「京の三大漬物」とも呼ばれ、家庭の食卓に上るだけでなく、みやげものとしても喜ばれる品々です。今回は常盤貴子さんが京漬物の美味しさの原点を探ります。
上賀茂神社の鳥居から東に続く社家町(社家:神職を世襲する家柄)にあるのが、1804年(文化元年)創業のすぐき漬の老舗「京都なり田」。原材料となるすぐき菜はかぶらの一種で、発祥は諸説ありますが、上賀茂神社周辺の社家の屋敷内で栽培が始まり、上賀茂神社から流れる水で育て、漬物にして神社や御所に奉納する神聖なものだったとか。江戸時代後期には、すぐき菜の他の村への持ち出しを禁ずるお触書が出され、栽培技術はもちろん、種一粒も門外不出のものとして上賀茂で守られるようになったそう。近年は上賀茂地区の宅地化が進み、現在では京都市北部の左京区静原の農家、戸田さんもすぐき菜を育て、毎年11月中旬から年末にかけて漬け込みを行っています。その作り方は……皮を剥いて形を整えたすぐき菜を塩と重石でしっかり水分を抜き、さらに追い漬け、そして加熱室で数日間発酵させるなど、とても手間暇がかかる作業。この丁寧な工程によって、すぐき漬の独特な酸味やコク、旨みが生まれるのです。
京都の台所、錦市場のすぐ近くにある「千枚漬本家 大藤」。京都御所で料理方を務めていた初代・大黒屋藤三郎が、旬のかぶらを使った漬物を思い立ち、千枚漬を考案しました。その後、千枚漬を販売する店を始めたのが1865年(慶応元年)。千枚漬の原材料は京の伝統野菜、聖護院かぶらです。16世紀に聖護院の農家が近江国からかぶらの種子を持ち帰り、改良したと伝えられています。近年、聖護院あたりも宅地化が進み、大藤で扱うかぶらも滋賀県の契約農家に作ってもらっています。かぶらは厚めに皮をむいた後にカンナで薄く切り、下漬けをして3日間寝かせます。その後の本漬けの工程は一子相伝。誰も見ることは叶いません。
下京区大宮通に面する「川勝總本家」は、しば漬はもちろん京漬物全般の加工、製造、販売を行っています。しば漬は大原で採れた紫蘇を使ったものだけが、しば漬と名乗ることができます。盆地にある大原は昼夜の寒暖差が大きく、香りの高い赤紫蘇が収穫できます。赤紫蘇がしば漬の風味に欠かせないのです。また、川勝總本家では「漬物教室」を開催(1月初旬~6月中旬、8月中旬~11月中旬の日曜、祝日、お盆を除く)。ぬか漬けの作り方を教わることができます。
【次回放送情報】
■京都画報 第16回「京の漬物 -受け継がれる里の味-」
BS11にて1月11日(水)よる8時00分~8時54分放送
※ 放送後、BS11+にて1月11日(水)よる9時~ 2週間限定で見逃し配信いたします。