京都市には1500軒以上もの寺院があり、さまざまな仏様が安置されています。今回は常盤貴子さんが女性京仏師・松久佳遊(まつひさかゆう)さんと共に、美しい仏像に出会い、仏師の仕事に触れる旅に出ます。
最初に訪れたのは、古くから皇室と関係の深い泉涌寺(せんにゅうじ)。真言宗泉涌寺派の総本山で、境内には塔頭があり、それぞれの仏像によって時代ごとの特徴を知ることができます。即成院(そくじょういん)には、本尊・阿弥陀如来坐像とその左右に二十五菩薩像(共に重要文化財)が並び、「現世の極楽浄土」と呼ばれる世界が広がります。二十五菩薩像を見ると、まるでオーケストラのようにそれぞれ手に楽器を携えています。これは臨終の際に人々を迎えに来て、極楽浄土へ導いてくれるという経典に基づいたもの。阿弥陀如来坐像は平安時代の作で、丸みがあり柔らかく、優しい表現が特徴的の「定朝様(じょうちょうよう)」という様式です。
そして同じ塔頭の戒光寺(かいこうじ)は、鎌倉時代の仏師・運慶(うんけい)、湛慶(たんけい)親子の合作による釈迦如来立像が。身の丈はおよそ5.4メートル、台座から光背の先端まではおよそ10メートルあり、木造の釈迦如来としては世界一の大きさといわれています。衣の部分は、細く切った金箔を張り付けていく「截金(きりかね)」という伝統技法が用いられているのだとか。現在、その技術を受け継ぐ第一人者が松久さんの姉、真やさんです。佳遊さんと共に、松久宗琳佛所(まつひさそうりんぶっしょ)で仏像造りの技術を守り続けています。
豊臣秀吉が奈良の東大寺にならって、東山の大和大路に大仏を安置する方広寺を建立しました。ところが落雷などで大仏は焼失、再建しては焼失を繰り返し、現在、往時を物語るのは鐘楼や諸将の名が刻まれた石塁、石塔だけとなりました。
その門前に400年の老舗料亭として知られる「わらじや」があります。方広寺の建設中にしばしばその様子を見に訪れた秀吉は、当時「紀ノ国屋」という茶屋であったこの店で、草鞋を脱いで休憩したことから店名が「わらじや」に。古式ゆかしい店のしつらえは、まさに“市中の山居”という雰囲気です。店の名物は「うなべ」と「うぞふすい」。うなべは、昆布とカツオのダシで、筒切りにして焼いたウナギを煮て味わいます。うぞふすいは、鍋の中に白焼きにしたウナギと卵に自家製の餅、それにシイタケ、ゴボウ、三つ葉などを合わせた香り豊かな一品です。
そして最後に訪れたのは西京区大原野にある願徳寺です。およそ1300年前、持統天皇の発願によって創建された古刹で、平安時代の傑作といわれる観音菩薩を祀っています。如意輪観世音菩薩半跏像(にょいりんかんぜおんぼさつはんかぞう)(国宝)、平安時代前期に作られたカヤの一木造。作者は不明ですが、その作風から中国からの渡来仏、あるいは渡来人による作との説があります。凛とした表情に知性的な眼差し、滑らかな体の線、体を包む布の柔らかさなど、木を彫ったとは思えないほど繊細そのもの。佳遊さんも仏師としての心構えをもう一度、胸に焼き付けた旅となったようです。
【次回放送情報】
■京都画報 第21回「心を癒やす仏像めぐり -仏師と訪ねる京の旅-」
BS11にて6月14日(水)よる8時00分~8時54分放送
※ 放送後、BS11+にて6月14日(水)よる9時~ 2週間限定で見逃し配信いたします。