ここからしか見えない京都
  

“内”に招き入れたい、心強い鬼をご存知ですか?

「鬼は~そと、福は~うち」
皆さん、豆撒きに恵方巻など、節分は楽しまれたでしょうか? 節分とは、旧暦において1年が始まる“立春”を前に鬼を払う日、すなわち「邪気(邪鬼)払いをする日」ですが、一般的には“鬼”に悪いイメージをお持ちの方が多いことでしょう。しかし京都では、見た目は恐ろしくも、あらゆる災厄に立ち向かってくれる鬼を、民家やお寺の軒先などで見ることができるのです。

廬山寺大師堂

例年2月3日(2025年は2月2日)は節分の日。神社仏閣の多い京都では、節分行事が市中あちらこちらで賑やかに開催されます。とりわけ吉田神社や壬生寺などが有名ですが、節分会追儺式鬼法楽(せつぶんえついなしきおにほうらく)(通称:鬼おどり)が行われる廬山寺も、境内から溢れそうなほどに大勢の参拝者で賑わいます。

松明と宝剣を携えた赤鬼、大斧を持った青鬼、そして大槌を持った黒鬼が、大きな足音を立てながら、廬山寺の開基である良源(元三大師)を祀る大師堂に入ります。
堂内では、厄除け開運や福寿増長のお勤めが執り行われており、三体の鬼は法要を妨げようとするのですが… 追儺師が射る邪気払いの弓や、蓬莱師、福娘らによって撒かれる蓬莱豆、福餅に屈し、鬼は逃げ去っていくのです。どこか愛らしさのある鬼の去り姿に、観覧者の頬は自然と和らぎます。

鍾馗像

中国の玄宗皇帝の夢に現れた鬼を退治したという“鍾馗(しょうき)”像を屋根に据えたり、京都御所のように敷地や建物の北東角を凹ませ、「角(かど・つの)を取る」ことで“鬼門封じ”をしたり、鬼はいつも追い払われる存在なのでしょうか…。いえ、決して忌み嫌われるだけの存在ではなく、その絶大なパワーで幾多の厄を払う、頼もしい用心棒でもあるのです!

角大師護符(真如堂)
比叡山

このお札に描かれた、おどろおどろしい姿の正体をご存知でしょうか? 一見すると妖怪のようにも見えますが、こちらは“角大師(つのだいし)”。実は先ほどご紹介した廬山寺の開山で、比叡山延暦寺の中興の祖ともされる良源(元三大師)のお姿なのです!

比叡山山中に佇む元三大師堂
元三大師堂前には角大師の碑が立ちます

良源が73歳の時、世の中に疫病が大流行します。一説によれば、この難儀に立ち向かうため、良源は大きな鏡に自分の姿を映しながら深く瞑想に入ると、そこには骨ばかりの鬼の姿が。弟子にその姿を描かせ、そして版木に刻んでお札に刷って配ると、護符を戸口に掲げた家では、疫病や災厄を免れるようになったそうです。そのことから天台宗の寺院では、“角大師護符”が広く授与されるようになったといわれています。

左から、三千院・延暦寺(横川)・廬山寺の角大師護符

厄に立ち向かう心強い用心棒として、“内”に取り込まれた角大師護符ですが、そこに描かれる姿かたちは様々。見比べてみるのも楽しいものです。
また良源にはいくつもの逸話が残ることから、“豆(魔滅)大師護符”や“降魔(鬼)大師護符”に見られるように、異なる形式のものも存在するのです。

左から、角大師護符・豆(魔滅)大師護符・降魔(鬼)大師護符
※すべて延暦寺横川の元三大師堂(四季講堂)

それぞれご利益も異なり、「角大師護符」は戸口に貼ることであらゆる災厄除けに、「豆(魔滅)大師護符」は水回りを護り、「降魔(鬼)大師護符」は身体の患部から災厄を取り除くとされます。忌み嫌われることの多い鬼が、強い味方となって様々な災厄を取り除いてくれる… 京都の、ことに旧家の軒先や天台宗寺院の玄関先などで目にする元三大師の護符。1200年の都は、鬼によっても守られているのかもしれません。

京都に残る鬼伝説や冬の京都ならではの味をご紹介
BS11では、2月26日(水)よる7時00分から、京都が大好きな俳優・志田未来さんが旅人となり冬の京都をめぐる特別番組を放送。
京都の北部地域に伝わる「鬼伝説」を紹介するほか、伏見稲荷大社を舞台に披露される、金剛流若宗家・金剛龍謹さんによる「鬼」をテーマとした演目の模様もお送りします。
さらに、冬ならではの老舗料亭の京料理や、収穫の最盛期を迎えた柚子も堪能する、身も心もあたたまる冬の京都旅です。どうぞお楽しみに。

【放送時間】
冬の京都2025~受け継がれる伝統と技~
2025年2月26日(水)よる7時00分~8時30分
BS11(イレブン)にて放送

旅人:志田未来

製作著作:KBS京都 / BS11

この記事を書いた人
EDI京都文化観光チーム

タグ一覧

#人気ワード